「部活をやめたい」「普通の大学生の生活もいい」 そう思いながら、最後までやり切ったバスケ部主将たち
部の活動休止や大会の中止。厳戒態勢の下で行われた無観客試合……。新型コロナウイルスは学生アスリートたちにも大きな影響をおよぼした。この難局に直面した2人のバスケ部主将、早稲田大学の小室悠太郎(4年、北陸学院)と青山学院大学の斉藤諒馬(4年、山形南)にスポットライトを当て、前例のないシーズンをどのように戦い抜いたかを振り返ってもらった。
不完全燃焼のまま大学生活を終えてもいいのか
「部活をやめて大学生らしい生活をしてもいいかもしれない。正直、そう考えてしまいました」 早稲田大の小室はそう打ち明ける。 昨年4月から6月の2カ月間、大学が休校となったことを受けて、小室は金沢の実家に帰った。オンライン講義と部のミーティング、トレーニング、就職活動。やることはそれなりにあったが、それでも東京にいる時と比べれば格段に暇だった。 「バスケのない毎日を過ごしている内に『普通の大学生の生活もいいな』って、気持ちが切れてしまったんです。練習を再開してからも試合があるかは分からなかったですし、他大学の4年生が全員部をやめたという話を聞いて、『どうせ試合ができないんだったら、いっそここで部活をやめて、他のことをやった方がいいのかもしれない』って考えちゃって。『今できること、今できること』って自分に言い聞かせてはいたけれど、本当にそれをやることに意味があるのか……。不完全燃焼のまま大学生活が終わってしまうことが怖かったんです」 高校時代に国体準優勝、ウインターカップ3位という素晴らしい実績を残しているものの、小室は競技を極めるというより「広い世界を見たい」という思いで大学に進んだ。「高いレベルでバスケをしたいとは思っていましたけど、卒業後にプロになりたいと思ったことは一度もありません。大学で色々な世界を見た上で、社会人として活躍できればいいなと思って早稲田に進学しました」。そのような思いを持った青年が、就職までの残り少ない時間をできるだけ有意義に使いたいという気持ちは、誰にも責められない。 そんな小室の元に、10月に今季初の公式戦が開催されるという報が届いたのは、夏の終わりのことだった。「この大会開催に向けて色々な方が動いてくれている。ここで自分がやめるわけにはいかない」。気持ちを揺らせていた小室は、最後まで部をまっとうするという意志を固め、同じようにモチベーションの揺らぎに苦しんでいたチームを、自らが先頭に立って牽引(けんいん)。12月のインカレでは2年連続でベスト4入りを阻まれた日本大学を3年ぶりに破り、大会を8位で終えた。