エア・ドゥ、ワンチームで働く羽田新オフィス
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、オフィスの縮小など働く場所のあり方を見直す企業が増えている。一方で、航空会社は航空機を運航する以上、多くの部署が空港の近くで仕事をする必要があり、オフィスに求める要件もデスクワーク中心の企業とは異なる。 【ワンチームをコンセプトにした新オフィス】 札幌市に本社を置くエア・ドゥ(ADO/HD)は、運航の拠点を羽田空港に置いている。コードシェア(共同運航)などでつながりの深い全日本空輸(ANA/NH)と同じ第2ターミナル(T2)に乗り入れているが、オフィスは日本航空(JAL/JL、9201)やスカイマーク(SKY/BC)などが発着する第1ターミナル(T1)にあった。T2のオフィススペースが飽和状態だったためで、T2北側に新たなオフィス棟が新設されたことを契機として、今年3月18日にパイロットや客室乗務員、運航関連の部署などの約300人が、フリーアドレス制の新オフィスに移った。 移転プロジェクト名とコンセプトは「ワンチーム エアドゥ(ONE TEAM ∞ AIRDO)」で、テーマは「一体感の醸成」「オペレーション強化」「移動コスト削減」の3つ。デザインポリシーとして、(1)オープン:あいさつが飛び交う、様子がわかる、すぐに伝わる、(2)繋がる:エリア配置や動線での接点作り 他拠点とつながる施策、(3)進化:業務品質向上のための共通ルール、業務に合わせた場所の選択、書類の共有化・スリム化、(4)見える化:会議室を削減しオープンミーティングエリア充実、状況把握の質の向上とスピードアップ、(5)機能強化:平常時、緊急時ともに情報収集・整理・意思決定の機能強化の5点を掲げた。 プロジェクトは2018年6月に発足し、新オフィスへ移る運航にかかわる部署を中心に社員が集まり、ほかの企業のオフィスを見学したり、社内調査で課題を洗い出した。パートナー企業は4社の中からコンペで、オフィス用家具などを手掛けるオリバー(7959)と、オフィスデザイン会社のフロンティアコンサルティング(東京・中央区)を選定し、2019年7月から基本設計などを始めた。 羽田空港内にあるエア・ドゥの東京オフィスには約600人が勤務。新オフィスにはパイロットや客室乗務員、運航関連部門の約300人が移った。T1の旧オフィスには、間接部門が残る。フリーアドレスで役職者の机は設けず、メインフロアの半分を客室乗務員関連のエリア、残り半分をパイロットや運航系のエリアとした。他部署の人とも接する機会を増やし、一体となって仕事をする雰囲気を創出している。 移転プロジェクトにかかわった総務部羽田業務グループの井崎大明さんは、「単なる移転ではなく、会社のさらなる成長のチャンスと捉え、プロジェクトメンバー全員でエア・ドゥがどうあって欲しいかや、どう働きたいのかを考えました」と、ワンチームをコンセプトにオフィス作りを進めたと話す。新オフィスの規模を拡張する構想はあるものの、コロナの影響により具体的な計画立案には至っていないという。 移転後に実施した社員へのアンケートでは、「これまで食事や休憩する場所があまりなく、オフィス内で休憩を取ることがなかったが、移転してからはオフィスで過ごす機会が増えた」「他部署の人とコミュニケーションを取りやすくなった」といった声が聞かれた。一方で、窓側席などに設置された電源コンセントについて、「欲を言えば充電用USB端子があれば」と率直な感想もみられた。 エア・ドゥは1996年11月14日に、「北海道国際航空」として札幌市内に設立。国の規制緩和に伴う「新規航空会社」として誕生した1社で、1998年12月20日に羽田-札幌(新千歳)線をボーイング767-300ER型機(登録記号JA98AD、1クラス286席)により1日3往復で運航を始めた。現在の社名「AIR DO」には2012年10月1日に変更し、愛称と社名を揃えた。また、現行制服は就航20周年を記念し2018年12月20日から着用している。
Tadayuki YOSHIKAWA