巨人連覇、勝てばいいというものではない/廣岡達朗コラム
水原、川上監督なら絶対にやらない
巨人が連覇を果たした。勝てばいいというものではない。ゴール目前は優勝するチームとは思えなかった。内野手の増田大輝を外野で起用してエラー。一芸に秀でた選手を部分的に都合よく使ってきたから、こういうプレーが起こる。プロとして全力を尽くしてやらないのは観客に失礼。最後はマジック対象チームが負けて優勝が転がり込んできたようなものだった。 巨人が2年連続の優勝を果たした3つの要因とは? 打線の中で優勝慣れしている丸佳浩が気を吐いていたが、丸が巨人の柱になったらどうなるのだ。V9は長嶋茂雄、王貞治がいて初めて成り立っていた。極端にいえば、いまはONが七番、八番を打っているようなもの。生え抜きが脇役に甘んじている。丸がホームランを打ったら、ベンチは両腕でマル印を作って出迎えるが、監督まで選手と同じ調子でポーズを取っている。あんなことは水原茂監督、川上哲治監督だったら絶対にやらない。 今季のセ・リーグを振り返ると、チームにリーダーがいない。本来は、年季が入っていて他球団ににらみを利かせられる存在が四番を張るべきだ。それが私の持論である。ところが、素材がいい、打てるからという理由で巨人・岡本和真、ヤクルト・村上宗隆、DeNA・佐野恵太と、若い選手が四番を打っている。彼らは三番、五番を打たせればもっと打つ。そして30歳ぐらいで心身ともにピークを迎えるときに、「君はウチの宝だ」と絶対的四番として君臨させるべきなのだ。やがて年齢とともに結果が出なくなってきたら、それも自然の原理。人間は生まれたら死ぬ。そこをいまの若い指導者は実感できていない。 選手のほうでも阪神・福留孝介が現役に未練を抱いている。それは人それぞれだ。しかし、あと何年できるというのか。鳥谷敬もロッテに行ったがレギュラーにはなれていない。惜しまれて去ることに、値打ちがあるのではないか。 中日は終盤にいい戦いをしていた。人間は目的があると想像を超えた強さを発揮する。中日がなぜ頑張っているかといえばAクラス入りという確かな目的があるからだ。7年連続Bクラスに沈んできた。Aクラスになって次は優勝。物事には順序がある。最下位のチームが翌年に優勝を目指すというバカな話はない。監督を代えたから優勝? 順序というものが欠落しているから、やればできるという人の値打ちも分からない。 一方、DeNAはラミレス監督の辞任が決まった。5年も指揮を執って、昨季までAクラス3回とはいえ、優勝はしていない。どこかに欠陥があるのだ。優勝していない監督はダメだという評価をはっきりと下さないから、采配を振るう上で妥協してしまう。