FIA/WRC、ラリージャパン2024後にヒョンデへ違反通告。車検でヌービル車とミケルセン車に規則外の部品
12月11日にFIA/WRCは、日本の愛知・岐阜を舞台に開催した2024年WRC世界ラリー選手権第13戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2024』において、ヒョンデ・シェル・モービスWRTが走らせたヒョンデi20 Nラリー1の9号車(アンドレアス・ミケルセン車)と11号車(ティエリー・ヌービル車)のリヤデファレンシャルケースについて、事前に認識されていた公認部品と異なっていた旨を発表し、チームに2万5000ユーロ(日本円で約400万円)の罰金を科したことを発表した。 【写真】ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)/2024年WRC第13戦ラリージャパン 今回FIA/WRCが発表したドキュメントNo2.15は、『STEWARDS DECISION No.12』と題され、ヒョンデ・シェル・モービスWRT宛ての一枚として発表された。 その内容には、審査委員会は、『フォーラムエイト・ラリージャパン2024』の競技後検査にて、9号車と11号車のリアデファレンシャルケースが公認フォームRa1-22/02に準拠していないことが分かり、WRCラリージャパン後に行われた検査によって公認フォームRa1-22/02/40/09ERJ(Joker 1C 2024)の写真F5-2と不一致であったことが判明したとある。 明らかにされた詳細では、11月24日(日)、11号車の最終車検中に、リヤデファレンシャルケースがホモロゲーションフォームRa1-22/02に準拠していないことが判明し、FIAテクニカル・デリゲートは、スチュワードに9号車の同じ部品をチェックするよう要請。スチュワードは同意し、9号車のチェックが行った結果、こちらも同様に準拠していないことが発覚。 そのため、FIAテクニカル・デリゲートは、レース終了後にFIAの施設で、11号車と9号車に指定されたすべてのリヤデファレンシャルのさらなるチェックを実施し、2024年FIA国際スポーツ・コードの付録Jの条項262.605に規定されている手順に則り、それらの部品をFIAに預けられたトランスミッションセットと比較するよう、スチュワードに要請した。 その後スチュワードは、FIAテクニカル・デリゲートの要請に同意し、すべてのリヤデファレンシャルケースは競技者によってフランスのヴァレイリーにあるFIAの施設に輸送され、11月28日(木)、FIAのデポジットボックスは競技者を代表してトーマス・コンデット氏とジョセリン・リトラ氏の立ち会いのもと、FIAテクニカル・デリゲートによって開封された。 ここでWRCラリージャパンに指定された部品の封印は、無傷であることが確認され、12月5日(金)に競技者を代表してFIAテクニカル・デリゲートとダミアン・ゴンチャロウスキー氏、ボリス・トドルフ氏の立ち会いのもと、さらなるチェックが行われた。 両方のリヤデファレンシャルケース(11号車と9号車)の検査後、FIAテクニカル・デリゲートは、以下の結論を含むレポートをスチュワードに提出している。 1. FIAに預けられたCADデータ(オリジナルホモロゲーションとジョーカーホモロゲーション)は正確。 2. ヒョンデi20 Nラリー1の当初のホモロゲーションのために2022年に預けられたものと、物理的な部品は正しかった。 3. しかし、40/09ERJ(ジョーカー1C 2024)のホモロゲーションのために2024年に預けられたものと、物理的な部品は正しくなかった。 4. ホモロゲーション・フォームRa1-22/02の写真F5-2と40/09ERJ(ジョーカー1C 2024)の写真は正しくなかった。 5. WRCラリージャパン後にチェックされた部品は、2022年に預けられたCADデータとリヤデファレンシャルの外部部品の両方と一致している。 その後、審査委員会は、11号車と9号車の競技者の代表者を召喚し、12月10日(火)7時(中央ヨーロッパ時間)に審問を実施。公聴会には、FIA/WRCスチュワード・セクレタリーのイヴォンヌ・ギリ氏も出席した。さらにリモートでFIAを代表してジェローム・トケ氏、FIAテクニカル・デリゲートのマリーナ・ドゥナック氏、FIA/WRCカテゴリー・マネージャー、ヒョンデ・シェル・モービスWRTを代表して、シリル・アビテブール社長兼チーム・プリンシパル、トルガ・オザキンチ(チームマネージャー)、FXデメゾン(テクニカルディレクター)、クリスチャン・ロリアー(WRCプログラムマネージャー)らが出席している。 公聴会にて、最初にロリアー氏は、ホモロゲーションフォームの写真は2021年に作成されたプロトタイプケースの写真であると説明。続いてアビデブール代表は、「チームのミスにより、ホモロゲーションフォームに添付された写真の修正を依頼し忘れていた。今後はこの種のミスを避けるため、社内プロセスを改善する必要がある。また、CADファイルはクルマに搭載されている部品と一致しており、誠意を持って行動したことを強調するためにこれを考慮に入れるべきだ」と主張した。 これに対しスチュワード委員長は、「それでもこの種のミスは、2024年FIA国際スポーツコード第10.3.3条の重大な違反であり、『クルマはそれぞれの公認文書に準拠しなければならない』と規定している」と強調。審議の結果として審査委員会は、クルマに搭載された部品が公認フォームに準拠していること、またその逆を確認するのは競技者の責任であると結論付け、この事件は公認フォームを適切に更新しなかった管理/事務上の誤りの結果で、ヒョンデの内部プロセスにおける管理不足が原因であると結論付けた。 さらにこの文書には、過去の判例によれば、この種の違反に対する罰則は失格が正当なペナルティであったが、国際控訴裁判所は以前、「『例外的な状況』においては、競技者のクルマの不適合に対する客観的責任は、失格よりも軽い制裁につながる可能性がある」と判定しており、事務上の誤りや公認書類の間違いは『例外的な状況』と判断される可能性があると表記している。 今回の具体的な判決については、以下のような文言で示されている。 1) ヒョンデ・シェル・モービスWRTに2万5000ユーロ(日本円で約400万円)の罰金が科せられる。 2) ヒョンデ・シェル・モービスWRTに2万5000ユーロ(日本円で約400万円)の追加罰金が科せられるが、これは以下の条件で執行猶予付きで適用される a) ヒョンデ・シェル・モービスWRTは、2025FIA世界ラリー選手権の最初のイベントの事前検査の前に、公認フォームRa1-22/02を修正しなければならない。 b) ヒョンデ・シェル・モービスWRTが、2025FIA世界ラリー選手権中のいかなるWRCイベントでも、同様の違反を犯してはならない。 ※2024FIA国際スポーツ規定の12.8に基づき、罰金は通知後48時間以内に支払われるものとする。支払いが遅れると、罰金未払い期間中は出場停止となる場合がある。 [オートスポーツweb 2024年12月11日]