英国王室を永遠に変えた女王のクリスマスメッセージ
エリザベス女王は2020年12月25日、英国の君主として68回目となるクリスマスのメッセージを発信する。1957年12月25日に女王のスピーチがテレビで放映されて以来、長年続けられてきた伝統となっている。 【写真】ほっこり。42枚の写真で振り返る、ロイヤルファミリーのクリスマス 「君主のクリスマスメッセージ」として知られる英王室の伝統は1932年に始まり、短い演説は君主がその年の主な出来事や、ロイヤルファミリーの個人的な節目を振り返る機会となった。1957年以前には、英連邦諸国に向けてラジオで放送されていたが、同年よりエリザベス女王はノーフォーク州サンドリンガムの領地内にある私邸から、自身のスピーチを生放送で発信するというBBCからの依頼を受け入れた。 この年、何百万人もの人々が、クリスマスという最も神聖な家族の祝日にテレビの前に座り、女王の私邸から発信されるスピーチを初めて目の当たりにした。
多くの意味で、クリスマスメッセージの進化は、現代君主制に変革していく過程で、王室の象徴的な役割とロイヤルファミリーのプライベートへの国民の飽くなき関心のバランスをとるために貪欲に努力してきた英国王室の姿を反映しているように思える。王室は永遠に国民と一線を引いた存在として孤立したままで取り残されてしまうのか。あるいは少しずつ一般市民に溶け込んでいくのか……。そのようなことが問われてきたのだろう。エリザベス女王は最初の演説で、“開かれた王室”への重要な第一歩を踏み出した。「私はこの新しいテレビ放映によるクリスマスメッセージが、よりパーソナルに直接的に届くことを心から願っています」と午後3時にサンドリンガムのロング・ライブラリーから発信した。 女王は続けて、「私という人間が多くの人にとっては、遠くかけ離れた存在に見えてしまうことは避けられないでしょう。歴代の国王や女王は、新聞や映画ではよく知られていたものの、みなさんの個人的な生活に触れることは一度もありませんでした。しかし、少なくともこれから数分間は私の自宅の平穏にみなさんを迎え入れることができるでしょう」と国民に歩み寄った。 エリザベス女王は、クリスマスメッセージをテレビ放送で行った初の君主だったが、そのわずか5年前に初めてラジオ放送を行った女王はすでにプロフェッショナルだったそう。