【NBA】トレイ・ヤングが22得点11アシストの活躍、『宿敵』ニックスファンに「ラスベガスに行く」のパフォーマンスを披露
「僕は彼らから多くの愛と憎しみを受けている」
トレイ・ヤングは上機嫌だった。マディソン・スクエア・ガーデンで勝つことに、これほどの喜びを感じる選手は他にいないだろう。今回もニックスファンは、大嫌いな彼に『f**k trae young!!』と声を合わせて叫んだ。それがトレイの士気をくじくことはないと彼らは知っている。それどころか、ブーイングが彼に特別なバフ効果を与えることを薄々勘付いてはいるが、止められない。それは彼らが、トレイに屈することを意味するからだ。 前半は完全にニックスのペースだったが、第3クォーターを34-18としたホークスが逆転し、そのままセーフティリードを保って108-100で勝利した。トレイは36分の出場で22得点11アシストを記録。ブーイングの中で楽しそうにプレーした末に勝ったのだから、もちろん上機嫌だ。「どの試合も大事だけど、この試合に何が懸かっているかは分かっていたし、気合いが入っていたよ」とトレイは言う。 「前半は良いプレーができたわけじゃないけど、ディフェンスが機能して接戦をキープできた。もともと前半だけで決着するような試合じゃないのは承知の上。僕らはとにかく最後まで戦い続けるつもりだった」 このホークスのディフェンスで注目すべきはリーグ屈指のエースキラーとなったダイソン・ダニエルズだ。ジェイレン・ブランソンを追いかけ回し、フィールドゴール15本中5本成功の14得点に抑え込んだ執拗なディフェンスが、ニックスのオフェンスを沈黙させた。 ダニエルズがそうしたように、得点源かつプレーメーカーとなる選手がいれば、どのチームも全力で抑え込もうとしてくる。ホークスにとってはトレイがその存在で、昨シーズンまでの彼は3ポイントシュートを連発し、ディープスリーも迷いなく打って自分に火をつけようとしてきたが、今シーズンの彼はプレースタイルを変えている。フィールドゴール試投数と得点はルーキーイヤーに次ぐキャリアで2番目に低い数字だが、アシストはキャリアハイだった昨シーズンの10.8からさらに大幅に伸びて12.2となり、得点よりもアシストに比重を置いている。 それは彼自身が変えたというより、チーム状況が彼に求めたものだ。ヤングに次ぐプレーメーカーの立ち位置をジェイレン・ジョンソンとダニエルズが確立したことで、ヤングがディフェンスの注意を引き付けて2人のどちらかにパスを送れば、アウトナンバーを生かした効率の良い攻めができる。さらに今シーズンの新しい武器となっているのが、ヤングとジョンソン、あるいはヤングとダニエルズによるピック&ロールで、ここから展開される攻めの対応をまだどのチームも見いだせていない。 このピック&ロールが強力すぎて、ディフェンスは『第3の動き』にまで注意を向けられない。このニックス戦でも24得点を記録したディアンドレ・ハンターの最近の絶好調ぶりは、ディフェンスに生まれた隙を突いてリムに走ればアシストパスが出てくるからだ。 ホークスのオフェンスがトレイ・ヤング中心であることに変わりはないが、その見事な変化と進化が、今の好調を生み出している。トレイは言う。「僕は多くの選手を巻き込んでプレーしようとしている。そして全員がそれに応えてステップアップしている。それが勝利に繋がっているんだ」 この試合は、ラスベガスで行われるインシーズン・トーナメントの準決勝進出を決める対戦でもあった。試合終了のブザーが鳴る直前、コート中央のニックスロゴのところにいたトレイはサイコロを振る真似をした。ラスベガスに行くのはオレたちだ──。この日は寒そうに両腕を抱える『アイス』のパフォーマンスはなかったが、ニックスファンへのアピールは忘れなかった。 「昨日の夜に弟と話して決めていたんだ。僕たちはラスベガスに行くから、ってね」とトレイはこのパフォーマンスを説明した。「サイコロを振ったら8が出て、もう一度振って、お金を手にして帰る。あまり早い時間帯にやると退場処分になっていたかもしれないから(笑)」 『f**k trae young!!』のコールにも慣れたもので、「愛憎入り混じった関係なんだ」とニックスファンについて語る。「つまり、僕は彼らから多くの愛と憎しみを受けている。憎しみだけじゃなく愛もあるんだ。リスペクトだよ」 インシーズン・トーナメントの準決勝ではバックスと対戦する。これに勝てば、サンダーvsロケッツの勝者と決勝を戦うことになる。トレイは笑顔でこう語った。「僕らの評価を変えてみせるよ」