Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

ハンセン病〝隔離〟が蝕む人間の心 「奇妙な国」島比呂志【あの名作その時代シリーズ】

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
西日本新聞
ハンセン病〝隔離〟が蝕む人間の心 「奇妙な国」島比呂志【あの名作その時代シリーズ】

ハンセン病国賠訴訟提訴を前にしたためられた「ハンセン病訴訟・告訴宣言」の原稿。不自由な手で書き上げた

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は06年7月16日付のものです。 **********  たとえば、園内の地図を開いてみる。集合住宅、スーパー、理髪店、さらには教会、火葬場そして、納骨堂まである。そこが一つの町と言ってもおかしくないことが分かるだろう。  鹿児島県鹿屋市郊外。人里離れたサツマイモ畑の台地に国立ハンセン病療養所「星塚敬愛園」はある。五十年の人生をここで費やした島比呂志(本名・岸上薫)は「奇妙な国」と呼び、皮肉を込めこう書き出す。  「あなたがたは面積が四十ヘクタールで人口が千余人という、まったく玩具のような小国が、日本列島の中に存在していることをご存じだろうか」  その国の住民は、日本との「安全条約」によって衣食住を保障されている。幾つかの条件がある。癩(らい)菌という「滅亡の虫」をばらまかないよう日本に浸入しないこと、子孫をつくらないよう精管を切除すること。そして「滅亡こそが国家唯一の大理想」と解く。  作中、納骨堂が象徴的に登場する。そのモチーフだろうか。園の外れの薄暗い杉林の奥に旧納骨堂がある。苔(こけ)むし黒ずんではいるが、古代ローマの建築を思わせる威容は、まだ朽ちてはいない。「滅亡の国のシンボル」。島はそう呼んだ。    ■   ■  「ハンセン病患者の壮絶な姿を描いた北條民雄とは対極の作品。患者の生活を恬淡(てんたん)と描いているが、それだけに余計、不気味な感じがします」。島が立ち上げた同人誌「火山地帯」を引き継いだ作家の立石富男さん(57)は鹿屋市の自宅で語った。

本文:2,495文字

写真:2
  • 雑木林に隠れるようにたたずむ星塚敬愛園の旧納骨堂。作品の中では「滅亡の国のシンボル」と書かれた

続きをお読みいただくには、記事の購入が必要です。

すでに購入済みの方はログインしてください。

税込220
PayPay残高
T-POINT
使えます
サービスの概要を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。購入後に記事が表示されない場合はページを再度読み込んでください購入した記事は購入履歴で読むことができます。

西日本新聞

西日本新聞の有料記事

PayPay残高使えます