軍事・産業のデュアルユース 防衛省が民間技術活用に本腰【WBSクロス】
WBSクロス、今回のテーマは“防衛に民間技術”です。日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中、防衛省が民間技術の活用に力を入れ始めています。
千葉・香取市にあるスタートアップ企業「セレンディクス」の工場。巨大な3Dプリンターで作っているのは住宅です。費用を550万円ほどに抑え、2週間以内に建物を作ることができます。そんなセレンディクスでは政府との連携が始まっています。 「防衛のために、例えば人の命を守るための爆弾に耐える建物がこれから求められている」(「セレンディクス」の飯田國大COO) 世界で紛争が続き、東アジアでも北朝鮮のミサイルの脅威が高まる中、日本の防衛省から「建物が破壊された場合の早期復旧などに活用できる」との意見が上がっています。 セレンディクスは現在、建物を作る期間をさらに短くする技術も開発中です。これまで素材自体に混ぜ込んでいた速乾剤をプリンターから出力する直前に混ぜ込むことで固まるまでの時間を40分から30秒に短縮。全ての部材を出力するまでの期間が2週間から2日間になりました。 「実際に生命を守ることができるのか。実証実験を防衛省と今後やる必要がある」(飯田COO)
日本の防衛省はこうした民間の技術を、防衛分野に転用する動きを進めています。防衛省は今年、経済産業省と、軍事・産業の両方で使える「デュアルユース」技術を育てる新たな枠組みを作りました。防衛省がまとめた防衛装備のニーズ、それに合致するスタートアップの情報を集め、経産省が一覧を作成し、装備化の検討を進めるという形です。 この枠組みを生かしているのが、先月発足した「防衛イノベーション科学技術研究所」です。日本の防衛技術の最前線を担うという重要施設。その研究所内に初めてテレビカメラが入りました。 一見、ただのオフィスのようですが、男性のパソコンの画面を見せてもらうと「民生技術等を活用」とあります。自衛隊の装備に民間技術をどう使うかという資料でした。 さらにプログラムマネージャーの加藤雅浩さんの前職は出版社の「日経BP」です。研究所には防衛省からの出向者に加え、民間企業の出身者や大学の研究者など約80人が集まっています。 スタートアップの技術なども活用し、防衛装備の開発から装備化までの期間を従来の10年ほどの期間から約3年に縮めることなどを目指します。 「技術をいかに素早く取り入れて、それをわれわれの方で咀嚼し形にしていかないと、これからの戦い方についていけない」(「防衛イノベーション科学技術研究所」の片山泰介所長) ただ、現在日本の防衛省の研究開発予算はアメリカ国防総省のおよそ30分の1。研究に関わる人数も100分の1以下という状況です。