ドイツで活躍中の21歳小兵ドリブラー伊藤達哉が森保J秘密兵器の一人
18歳で日本から飛び出した瞬間から、子どものころからテレビの画面越しに憧れてきたヨーロッパの戦場、要は非日常的な世界が伊藤にとって日常になった。意識が劇的に変わったなかで、身長が低いだけではなく体重も59kgと軽いがゆえに、簡単に吹っ飛ばされたことも一度や二度ではない。 それでも必死に歯を食いしばり、自身の体に搭載された独自の武器をとことん磨きあげながら弱肉強食の世界で生き抜いてきた軌跡は、伊藤の内面に強靭なメンタルを脈打たせる源になった。取材エリアで何度も発せられた自信あふれる言葉と、落ち着き払った立ち居振る舞いは異彩を放っていた。 「自分が普段プレーしている場所は、一応、くくりで言えば海外組ですし、プレーのインテンシティーなども高いと思っています。なので、自分が背伸びをして代表でいいプレーをするというよりは、いまの自分にできることだけに集中しようと、逆に割り切っている感じですね。いざ試合となれば、もしかしたら違った感じになるかもしれない。それでも、現時点では緊張というよりは自分に何ができるか、こういうプレーをしたいといったことしか考えていません」 今シーズンはクラブ史上で初めて2部を戦うハンブルガーSVに残留し、すでに開幕したリーグ戦では4試合すべてに出場している。ロシア大会をもって代表引退を表明したチームメイト、酒井高徳からは「いつも通りやれば大丈夫。気負わないでやって来い」とエールをもらった。 4日には中島や堂安らが合流し、招集された23人全員が顔を合わせる。戦術的なトレーニングも始まるなかで伊藤がチャンスをもぎ取り、チリ戦もしくはコスタリカ戦のピッチに立てば、2012年のFW宮市亮(現ザンクトパウリ)以来2人目となる、Jリーグを経験していないA代表選手が生まれる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)