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その「リツイート」大丈夫?削除済み、炎上なしでも名誉毀損に

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産経新聞

 ツイッターには他人の投稿を転載する「リツイート」と呼ばれる機能がある。拡散や共有、応援などさまざまな目的があるとされるが、一部のリツイートをめぐり、法的責任を問うケースが相次いでいる。元大阪府知事の橋下徹氏がジャーナリストを相手取った訴訟では大阪高裁が6月、昨年9月の1審に続き名誉毀損(きそん)を認定。高裁は「経緯や動機を問わず、リツイート主は投稿の責任を負う」と具体的に明示した。専門家は「安易な情報拡散に警鐘を鳴らす判断だ」とする。(杉侑里香)  ■「賛同行為」に賛否  《リツイートにも責任が生じるルールが形成された》《SNS利用者は肝に銘じましょう》《表現やリツイートの自由は絶対的なものではない》。高裁が判決を言い渡した6月23日の夜、橋下氏は自らのツイッターを連続更新し、250万人超のフォロワー(登録読者)に持論を訴えた。  橋下氏は、ジャーナリストの岩上安身氏の投稿を問題視していた。岩上氏は平成29年10月、「府知事時代の橋下氏が幹部職員を自殺に追い込んだ」などの第三者の元ツイートをそのままリツイート。後に削除したが、橋下氏はパワーハラスメントをする人物だとの印象を与えられたとして110万円の損害賠償を求めて岩上氏を提訴。岩上氏側は言論を封じ込める目的のスラップ訴訟だと主張し、逆に300万円の支払いを求めて反訴した。  昨年9月の大阪地裁判決は、リツイートが「内容に賛同する表現行為で責任を負う」と認定。橋下氏の訴えを全面的に認め、岩上氏に33万円の支払いを命じた。ただ、「リツイート=賛同」とみなした判決については、ネット上でも賛否が割れた。否定派からは《リツイートは他の人に意見を問う目的もある》とし、必ずしも賛同ではないとの意見も。岩上氏側は地裁判決を不服とし、控訴した。  ■「経緯や動機問わず」  控訴審で岩上氏側は、リツイートの法的責任をめぐり、SNS上の表現活動を萎縮させるとする憲法学者の意見書などを提出。しかし、今年6月23日の大阪高裁判決でも、司法判断は覆らなかった。  「元ツイートが社会的評価を低下させる内容の場合、リツイート主も経緯や動機を問わず法的責任を負う」と西川知一郎裁判長。元ツイートが真実だとの証拠はない上に、岩上氏のリツイートが炎上や拡散されず、後に削除されたことも考慮しても、西川裁判長は「橋下氏の社会的評価を低下させた」と認めた。  さらに西川裁判長はツイッターの特性について、投稿内容が短期間でも「際限なく拡散する可能性や危険性がある」などと言及。リツイートを含め、投稿者は「表現が人の客観的評価を低下させるか否かについて、相応の慎重さが求められる」と結論付けた。  判決後、岩上氏は記者会見で「全SNSユーザーに影響する内容」と述べ、上告を検討するとした。  ■相次ぐ訴え  気軽に他人の投稿を簡単に共有・拡散できるリツイートをめぐっては、他人を傷つけたり、デマが広がったりする弊害を指摘する声がある。橋下氏と同様に、訴訟に発展するケースも出ている。  性暴力被害を受けたという訴えを公表したジャーナリストの伊藤詩織氏は6月、自身を中傷するイラストを投稿した漫画家と、リツイートした男性2人に損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。伊藤氏側は「リツイートした男性らの法的責任は、元ツイートの漫画家と変わらない」と主張している。  昨年8月に起きた常磐自動車道のあおり運転事件でも、同乗者の「ガラケー女」とネット上で名指しされる被害を受けた女性が、拡散に関与した愛知県豊田市の市議(当時)を提訴。元市議に対する判決は東京地裁で8月に言い渡される予定で、他のリツイート主についても発信者の情報を開示するよう求める手続きなどを進めている。  ネット中傷問題に詳しい小沢一仁弁護士は、表現の自由との兼ね合いはあると認めつつも、「リツイートは情報を右から左に流しているだけと主張する人もいるが、投稿内容について元ツイートと同等の責任を負うという判断は妥当だ」と指摘。SNSでの安易な情報拡散に警鐘を鳴らす判決だと評価し、「リツイートしようとする投稿が正しいのか、まずは1次情報を確認するといった前向きな動きにつながれば」と話した。

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