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「対立」はイノベーションの源泉 組織を前進させるコンフリクト・マネジメントとは

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日本の人事部

異なる流儀や価値観を持つ個人の集まりである以上、組織内で起きる「対立」は避けては通れないものかもしれません。組織をマネジメントする立場の人からすれば、社員同士の対立はなるべく避けたいことですが、一見すると波風の立たない穏やかな組織でも、その裏側で対立の回避や妥協が繰り返されているようでは、変化を起こせずに緩やかに衰退していく危険性も秘めています。 イノベーションを生み出し、企業を前進させるためには、組織内の対立にどう向き合えばいいのか。「コンフリクト・マネジメント」をご専門とする、武蔵野大学 経営学部 経営学科の宍戸拓人准教授にお話をうかがいました。

ビジネスの現場ではなぜ、価値につながらない「妥協」が生まれるのか

――宍戸先生がご専門とされている「コンフリクト・マネジメント」とは、どのような研究分野なのでしょうか。 コンフリクトという概念自体は、ものすごく古いものです。歴史をひもとけば、19世紀のカール・マルクスをはじめとして、多数の哲学者や社会学者が取り組んできたテーマでもあります。 1970年代に入ると、心理学者のケネス・W・トーマスとラルフ・H・キルマンによって「二重関心モデル」が考案されました。コンフリクト、つまり対立が起きたときに、「自分の意見・利害」を重視するか「他人の意見・利害」を重視するかでX軸とY軸を構成し、解決に向けた手法を分類したものです。これは80年代ころから徐々に企業のマネジメントに応用されるようになりました。 二重関心モデルにおける分類は、次のように分類できます。 ・自分の意見・利害のみを重視する……「強制」 ・自分の意見・利害も、他人の意見・利害も重視する……「協調」 ・他人の意見・利害のみを重視する……「服従」 ・衝突を避け、対立など存在しないかのように振る舞う……「回避」 ビジネスの現場では基本的に、意見や利害の不一致を乗り越える「協調」を目指すために活用されてきたと言えるでしょう。しかし私が特に注目し、重要だと考えているのは、上記の4分類の中間にある「妥協」です。 ――「妥協」とはどういった状態を指すのですか。 例えば、ある会社に商品企画と販売の部門があるとします。商品企画は「どんどん新しい商品を出したい」と考え、販売は「定番商品を安定的に売っていきたい」と考えています。そのため、両部門の間では対立が起きています。 そんな状態なので、商品企画のメンバーが販売側へ新商品を持っていっても簡単には受け入れてもらえません。突き返されてしまうと、商品企画のメンバーは上司に何と言って報告すればいいのか、困ってしまいます。一方で、販売のメンバーにも事情があります。部門としては定番商品を売っていく方針なので、商品企画が持ってきた新商品を店舗に置いておくと上司に怒られるかもしれません。 そこで二人は相談し、「新商品を置くには置くけど、目立たない場所にしよう」と決めました。これが「妥協」です。こんなことをしても何の価値も生まないのですが、とりあえず物事を前に進めるために妥協するのです。 ――考えてみれば、似たようなケースは私たちの日常の業務の中でも頻繁に起きているかもしれません。しかし「妥協」を続けていると、いずれはさらに悪い状況に陥ることもあるかと思います。 そうですね。だからこそ、妥協を乗り越えて「協調」へ向かう必要があります。ここで重要なのは両者の意見や要求、利害の背景にあるものを理解すること。商品企画はなぜ新商品を出したいのか、販売はなぜ定番商品を売りたいのか。互いの背景を理解する必要があるのです。 「なぜ」と問いを立てていけば、それまでは見えていなかったことが明らかになるかもしれません。商品企画側はデータを分析して、定番商品の売れ行きがゆるやかに落ちていることに危機感を覚え始めているかもしれない。店舗側は新商品が出るとスタッフ教育の手間が増え、安定した売り上げを落としてしまうと危惧しているかもしれない。 意見や要求のレベルで表面的に妥協するのではなく、それらの背景を理解した上で互いの利害や懸念点を真剣に考え、互いが納得できるようにして価値を生むのが協調の意味でしょう。

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