磯村勇斗インタビュー「愛情深く、素直な人格に憧れます」
「木村翼の愛情深さを素敵だと思った」
──本作で演じた木村翼に対する印象は? 「演じるのはすごく難しかったです。いろんな気持ちを押し殺して生きている子なので、彼自身生活でスカッとした気持ち良さを感じることは何一つないと思うんですよ。またどんな局面でも頭のいい立ち回り方ができる子なので、演じる上でもいかに冷静で居られるかが大切なのかなと。翼という役を通して、俳優・磯村勇斗に還ってくるものは多かったです」 ──彼の生き方に共感する部分はありましたか。 「翼が生まれ育った場所は地元・静岡県沼津市が撮影現場でした。あの土地の空気を感じて、地元の町を背負って生きてきたところは共感できました。あと僕が素敵だと感じるのは翼の愛情溢れるところ。アニキと慕う先輩が困っているのを見ると、“僕が助けますよ!”と躊躇することなく言える。そんな彼の素直な気持ちに憧れます」 ──翼は劇中で綾野剛さん演じる山本賢治にひそかな憧れを持っていました。磯村さんは綾野さんにどのような印象を抱いていますか。 「それはもう、怪物だなあと(笑)。現場において綾野さんの役に対する向き合い方や目線、立ち姿に“俳優魂”を感じて、すごくシビれました。現場で演技を間近に受けて、日本の俳優界を背負っていく存在だなと。その思いは完成された映像を見て確信に変わりました」 ──一視聴者として本作を観て、この物語からどんな気づきを得ましたか。 「正義と呼ばれるものなど無いのではないかと思いました。別に“ヤクザ”を肯定するわけではありませんが、彼らも僕らと同じく家族を持つひとりの人間なのに、そこに向き合わないことは果たして正義なのか…そんな問題提起がこの作品でできたのではないかと。今までにない“ヤクザ映画”になったと思います」
サウナや絵を描く時間を通してトリップ。「違う世界に頭をシフトさせることが大切」
──作中にある地下格闘技のワンシーンでは磯村さんの筋肉美に圧倒されました! 「格闘技は昔やっていたのですが、本作に向けてカラダづくりにも励みました。役作りのために減量するのは、実は今回が初めて。体脂肪を低く維持したまま体重を増やさずに筋肉を増やすためにはタンパク質を過不足なく摂り続ける必要がありました。翼のカラダは主に鶏ササミでできています!」 ──楽しんで取り組まれたのが伝わってきます。 「筋トレと僕が大好きなサウナは疲労回復の点でも相性がいいんですよ。2020年の春までは週5でサウナ通いしてました。最近は頻度が減ってしまって、週1日行けたら理想的です」 ──2020年は激動の一年でしたね。振り返れば、TBS系『恋する母たち』の磯村さん演じる赤坂剛の“男の色気”に視聴者は釘付けになりました。 「ありがたいです。でも色気やセクシーさなどは本当に意識していなくて…! ただただ林優子をどんなふうに好きになるかだけに集中して演じていました」 ──役を演じる時、役についての下調べをするなどの“思考”の部分と自分の中からにじみ出す“感覚”の部分、どちらを重視していますか。 「うーん…ハーフ&ハーフ。木村翼もハーフ&ハーフ。ピザみたい?(笑)役のために情報を得るのはもちろん大事ですが、お芝居ではやっぱり感覚も大切です」 ──表現と言えば、磯村さんは以前『Numero TOKYO』のために「未来の愛」という作品を描いてくださり、インスタにも自作のイラストがアップされています。絵を描いている時はどんな気持ちですか。 「無に近いかな。でも、ワクワクしてます。何を描こう、どういう構成にしよう、どんな色を使おう…童心に戻ってる感じですね。時間をかけて描くのが好きなので、“やるぞ”という気持ちにならないと描きませんが、その時間は演技などのことも忘れています。たまに俳優とは違う世界に頭をシフトさせる時間が、僕には欠かせません」 Photos:Erina Fujiwara Styling:Ryosuke Saito Hair&Makeup:Tomokatsu Sato Interview & Text:Nao Kadokami Edit:Saki Shibata