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谷口ジローの世界にひたり、とっとりひとり旅

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旅行読売

 鳥取県は漫画界の巨匠を輩出し、さらに作品の舞台にもなった街が多い。気の向くまま鳥取をひとり旅して、「漫画の世界」にひたりたい。  山陰線倉吉駅から路線バスに揺られて15分足らず。鳥取県出身の漫画家、谷口ジローさんが描いた名作『遥かな町へ』の舞台になった小さな街にたどり着く。作品で紹介されるノスタルジックな街は、今は「倉吉白壁土蔵群」と呼ばれ、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。  同作は、48歳になったサラリーマンの主人公が出張帰りに思わぬ方向の列車に乗り、故郷の倉吉にたどり着くところから始まる。育った町を巡った彼は、死んだ母の菩提寺を訪ねる。墓前で手を合わせているとめまいに襲われ気づくと、いつの間にか姿格好が14歳に戻っていた。混乱した主人公は実家のあった商店街まで行くと、そこは中学時代を過ごした古い記憶の中にある町並みのままだった……。  バス停からかつてのメーンストリートである本町通りを歩く。主人公が歩いた場所は時計の針が止まったようにほとんど変わることなく、作品で描かれた昭和30年代の町並みそのままだ。途中には「森永キャラメル」や「明治チョコレート」のレトロな看板を掲げる建物があり、まるでタイムスリップしたような感覚が押し寄せる。  界隈には白いたい焼きが名物の昭和23年創業の米澤たいやき店や、100年以上前に建築され現在も営業する銭湯の大社湯(国の登録有形文化財)など見どころも多い。

主人公が歩いた道を辿り、作品のひとコマに出会う

 本町通りから一本裏を歩くと、 地区の中央にある赤い石州瓦に白い漆喰壁の土蔵の脇を堀のようになった玉川が流れる。土蔵の入り口には石橋が架かり、城下町ならではの風情を感じさせる。白壁土蔵群は、江戸、明治期に建てられたものが多い。 傍らの単行本を繰ると、同じ場所が見たままに描かれており、「ここだ!」と思わずひとり言。写実的で、緻密な谷口さんのタッチ に改めて感嘆する。ページと照らし合わせながら、古き良き倉吉の町 並みを行ったり来たり…… 。作品の中を“歩いて”いるような、なんとも不思議な感覚でひとり旅を楽しめる。  また、谷口さんの作品に昭和20年代から30年代の鳥取市を舞台にした『父の暦』がある。父の通夜のため故郷に戻った主人公が、親戚や家族と昔話をするうちに遠ざけていた父という大きくて優しい存在に気づくという内容だ。同作では鳥取城跡や鳥取砂丘などが登場する。 倉吉の懐かしい町並みを巡り、 鳥取城跡から鳥取市街を眺めれば、谷口さんの描く叙情的なストーリーが、一層胸に染みてくる。  県内には漫画スポットが点在。世界各国で大人気の漫画『名探偵コナン』の原作者、青山剛昌さんの出身地である北栄町(旧大栄町)には、「青山剛昌ふるさと館」をはじめ、『名探偵コナン』の登場人物のブロンズ像が立ち並ぶコナン通り、作品に登場する工藤邸などをイメージした「コナンの家 米花商店街」があり、散策が楽しい。  『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる漫画家の水木しげるさんの出身地、境港市には「水木しげる記念館」を中心に、2018年7月にリニューアルした水木しげるロード、妖怪神社など見どころが満載だ。 【谷口ジロー】プロフィール 1947年、鳥取市出身。『遥かな町へ』『父の暦』『「坊ちゃん」の時代』(関川夏央原作)など国内外で高い評価を得る。2011年フランスの芸術文化勲章シュバリエを受章。17年逝去。 観光の問い合わせ 倉吉白壁土蔵群観光案内所/TEL0858・22・1200 鳥取市観光案内所/TEL0857・22・3318 北栄町観光協会/TEL0858・37・5874 境港市観光案内所/TEL0859・47・0121