「13日の金曜日」の科学、信じていない人も実は影響されている、“厄除け”には一定の効果
13日の金曜日は本当に不吉なのか?
根拠がないにもかかわらず、ハシゴの下、黒猫、不吉な数といったものを恐れる迷信は驚くほど根強い。 「一度文化として定着したことは、ずっと続く傾向があります」。米コーネル大学の心理学教授、トーマス・ギロビッチ氏はそう話す。「迷信を無視すれば、運命を試すような気分になってしまうのです」 固い意志をもって、あるいは必要に迫られて、歯を食いしばりながらその日を耐える人もいるだろう。13日の金曜日には、普段とは違う行動を取る人もいる。 たとえば、この日には決して旅行しない、家を買わない、有望株に飛びつかないという人もいる。民俗歴史学者で、ストレス管理センター恐怖症研究所を設立した故ドナルド・ドッシーは、かつてナショナル ジオグラフィックの取材に応え、こういった行動の抑制で経済活動が大きく停滞する可能性もあると述べた。 ただし、行動を変える人がいる一方で、実際にトラブルが増えるわけではないとする研究も多い。2011年にドイツで行われた研究によると、13日の金曜日に手術を恐れる理由は何もない。手術の回数も結果も、ほかの日とまったく違いはないからだ。 2012年7月に学術誌「The American Journal of Emergency Medicine」に発表された別の研究によると、米国の緊急救命室の患者数も増えていない。不合理な恐怖が現実の行動に影響することがある株式市場においても、13日の金曜日に何か悪いことが起きたことはない。 いずれにしろ、13日の金曜日はそう頻繁にあるわけではない。2023年のように、ほとんどの年は2回だが、1回だけの年もある。ただし、2026年のように、1年に3回ある不吉な年もある。 2024年の13日の金曜日はすぐに過ぎていくだろう。そうすれば、どんなに迷信深い人でも安心できるはずだ。少なくとも、次の13日の金曜日がやってくるまでは。
文=Brian Handwerk/訳=鈴木和博