港町の風情を感じるゆるやかな舟の旅|水運の町・伏見を歩く【「水のみやこ」の歴史と文化を訪ねる】
月桂冠大倉記念館|天下の酒処を牽引する380余年の歩み
伏見 といえば酒造りを抜きに語ることはできない。伏見城の城下町の繁栄とともに酒の需要も高まり、慶長4年(1599)の奈良・興福寺の塔頭・多門院の僧による『多門院日記』には伏見酒、伏見樽の記述が見られるという。江戸時代になると酒造業は大いに発展。明暦3年(1657)には伏見の酒造家は83軒に達した。 その歴史については、寛永14年(1637)創業の月桂冠の資料館「月桂冠大倉記念館」で詳しく知ることができる。貴重な史料や用具類の展示、映像ホール、きき酒処、限定酒などが購入できるショップがある。 「江戸初期に83あった酒蔵も、販路の確保が難しかったり、幕末の勤皇派と幕府との闘争である鳥羽伏見の戦いに巻き込まれるなどして、末期になると多くが被災してしまいました。しかし明治以降、酒造仲間と助け合って復興を進め、鉄道による輸送や、施設の近代化による品質向上を目指しました」 こう話すのは、館長の立花規志夫さん。伏見は日本三大酒処のひとつとして知られるようになり、現在も20余の酒蔵がある。限られた地区にこれほどの蔵元が集約するのは全国でも稀有なことだ。 そして、この酒処を支えているのが、良質な伏流水である。桃山丘陵を潜った清冽な水が砂や礫が堆積した地層を通り、町のあちこちに湧き出す。湧水は鉄分が少なく、カリウムやカルシウムなどをバランスよく含んだ中硬水で、酒造りに最適な水といえる。 「さらりと美味しい水ですね。私の工房も同じ水脈の井戸水を使っています。鉄分が多い水を使うと、染色の際に色が濁ってしまうので、水質は重要です」と、仕込み水を口に含む吉岡さん。きき酒処では月桂冠自慢の銘酒を愉しんだ。 ◆月桂冠大倉記念館 京都市伏見区南浜町247 電話:075・623・2056 営業時間:9時30分~16時30分(受付16時まで) 休日:8月13日~16日、年末年始ほか 入場料:600円 交通:京阪本線中書島駅下車、徒歩約5分 インターネット予約可。