子どもの命より利便性? スクールゾーンの交通制限解除を求める町内会に、保護者やPTAはどう向き合うか
昨今、何かと話題になるPTA。問題点も多々ありますが、「何かしらの保護者の団体は、ないよりあった方がいい」と感じるのは、筆者だけではないでしょう。 【画像】運営方法や組織、役割の見直しなどを行っているPTAの割合は? PTAじゃなくてもいいですし、保護者団体がなくても特に問題ないケースもあるとは思うのですが、それでもまれに「何もないと、これは不利になってしまうのでは?」と感じさせられるケースもあります。 今回ちょうど、保護者団体の意味を考えさせられる話を聞いたので、紹介させてください。
◆登下校時の「通行制限の解除」を町内会が要望
東日本のとある町に暮らす絵美さん(仮名、30代)は、小学生の子を持つ母親です。2年ほど前、生まれ育ったこの町に、家族みんなで引っ越してきました。 家の前の道路のスクールゾーンの制限が一部解除されるかもしれない、と知ったのは、2023年の春頃でした。近隣の町内会から「制限を解除してほしい」という要望が出ており、学校が近隣の保護者たちに対し、制限解除についてどう思うかアンケートをとったのです。 絵美さんは制限解除に反対でした。その道路は急に幅が狭くなる箇所や、見通しの悪い急坂、積雪の際にスリップしやすい箇所などがあるわりに高速で走る車が多く、決して安全とはいえません。そのため50年ほど前から、子どもたちの登下校の時間帯は一方通行に制限されてきました。ほかの保護者も危険を感じており、アンケートには全員が「反対」と回答したそう。 それでも、町内会の考えは変わりませんでした。間もなく絵美さんの家に回ってきた町内会の総会資料には、制限解除を要望する旨が書かれていました。「その道を通って登校する子どもが減ってきている」「住民は車を迂回(うかい)しなければならず、経済的・時間的損失が大きい」などが、主な理由です。 絵美さんは心配になりました。絵美さん自身も以前、この道で自転車に乗っていたときに自動車と接触し、打ち身を負った経験がありましたし、ほかにも事故の話は何度も耳にしていたからです。 周囲に話を聞いたところ、この辺りの町内会は10年以上前からスクールゾーンの制限解除を求めており、PTAや保護者、学校がずっと反対してきたことが分かりました。 絵美さんは町内会長のもとを直接訪れ、規制解除に反対である旨を伝えました。でも理解は得られず、また市長や教育委員会に相談しても「当事者同士で話し合って」と言われただけでした。 どうにかできないものか。知恵を絞った学校とPTA会長は、2024年春頃から、保護者による子どもの送迎を禁止しました。この小学校では以前から車で子どもを送る保護者が多く、私有地への駐停車や渋滞により、近隣住民を悩ませていたからです。 その後、朝の道路事情は改善しつつありますが、町内会はいまも制限解除を求めているとのこと。 最近は近所の人のなかにも制限の解除に反対し、絵美さんを応援する人が少しずつ増えているのだとか。今も絵美さんは、通行規制を維持するために奮闘中です。