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アフターデジタルで勝ち抜く企業は「顧客体験」を最重視する

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紀伊国屋書店大手町ビル店

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店に戻る。新型コロナウイルスの感染者が再拡大する中、都心に立地する書店の客足の戻りは鈍い。6月や7月の初めに比べると、いったんは6割近く戻った来店客数が再び減っている印象だという。新刊への反応も鈍る中、書店が注目するのは、オンラインがオフラインのあらゆる場所に浸透するこれからの世界での企業変革を説いた2019年のベストセラー『アフターデジタル』の続編だった。 【ランキング一覧表】人気書店のビジネス書はこちら

ディストピアに向かう危惧から執筆

その本は藤井保文『アフターデジタル2 UXと自由』(日経BP)。著者の藤井氏はウェブコンサルティング会社のビービット(東京・千代田)で東アジア営業責任者を務める。現在は中国・上海を拠点に現地の日系企業にデジタルトランスフォーメーション(DX)支援のコンサルティングを手がけ、現地の最先端のデジタル事情に詳しい。 19年3月に刊行したIT批評家の尾原和啓氏との共著『アフターデジタル』は、「オフラインがデジタル世界に包含される」世界と、そこに向けて日本企業はどう企業変革を進めるべきかを説いた。その続編を1年あまりで刊行することにしたのは「アフターデジタルの誤った解釈から、世の中がディストピア(反ユートピア)側に進み、社会発展が止まるのではないか」という危惧からだったという。

アフターデジタルの社会は「悪用すれば、人の行動を支配することも、人々の格差を助長させることも可能」。だからこそ、「精神」が必要と説く。本書で言う精神とは、より良い社会をつくろうというような基本的な理念や心の働きのことだ。精神をしっかり持った上で、ビジネスに取り組む人はどのような能力と方法論を持つべきか、議論を進めていく。

顧客体験の重要性指摘

全体は5章構成。第1章では前著を引き継いでアフターデジタルとはどのような転換であり、何を引き起こすのかをまとめる。「属性データから行動データの時代になる」「商品販売型から体験提供型へ企業の競争原理が変わる」「従来型のバリューチェーンから、世界観を体現したジャーニーに顧客が乗り続け、企業は顧客に寄り添い続けるビジネスモデルに変化する」……こうしたアフターデジタルの世界が中国やアジア、米国などのビジネスの実例とともに語られる。 中国の実例を使いながら産業構造の変化と、そこに関わるプラットフォーマーやメーカー、サービサーの動きを整理する第2章では、アフターデジタルの世界での企業の勝ち方や環境変化への対応がダイナミックに語られる。 こうした未来図は日本ではどうなるのか、日本企業は何を目指せばいいのか、そこを踏み込んで考察していくのが3章から5章だ。ここで重要になってくるのが、タイトルにもあるUX(顧客体験=ユーザーエクスペリエンス)だ。日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、このユーザーにどのようなUXを提供するかという議論が抜けがちと著者は指摘する。ウェブ画面のデザインや使いやすさというレベルにとどまらず経営レベルでUXを考え、ビジネス全体を設計していく必要を訴える。

企業でDXの推進を担っているビジネスパーソンにはもちろん、これからのビジネスを考える上で示唆に富む実例と考え方の宝庫といっていいだろう。「コロナ関連の本など、このところ売れ筋に大きな変化がなかったが、この本が入ってランキングが動いた」とビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。 (水柿武志)

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