飲食店にバラまかれる協力金が、「現場で働く人」にまで届かないワケ
1都3県での緊急事態宣言が発出されて、多くの飲食店が時短営業をスタートさせる中で、「一律1日6万円の協力金」をめぐって、「不公平ではないか」という指摘が出ている。 日本人の平均賃金はいくら? 海外と比較 多くの従業員が働き、都心の一等地で営業をするような飲食店を経営する方たちは、「1日6万円ぽっちではとてもやっていけない」という声が多く、ランチやテークアウトを強化して稼ぐしかない店も多い。 その一方で、家族経営のような小さなお店で、賃料もそれほど高くないエリアで店を開いているような方たちの場合、「そんなにもらえるなら閉めたほうがいいや」と時短どころか休業に踏み切るケースも少なくない。何もしなくても過去最高の売り上げとなるような店もあらわれていることで、「補償儲(もう)け」という指摘もあるのだ。 だが、こんな飲食店支援の不公平感がちっぽけなことのように感じてしまうほど、「理不尽な支援」が世の中には存在していることをご存じだろうか。それは、飲食業で働く人たちの8割を占めるアルバイトやパートの方たちの「休業手当」だ。 SNSでは、店が時短になったことで、その分の休業手当がもらえたと喜んでいるアルバイトやパートの方も多いが、一部の店では「今月はシフトを減らしてもらっていいかな、ウチも厳しくて」とか「休業手当? ああ、それは完全に休業をしている店のことで、ウチは時短営業だから」なんて感じで店からうまいこと丸め込まれて、本来はもらえるはずの休業手当をもらえていない方たちもかなりたくさんいらっしゃるようなのだ。 要するに、事業者にバラまかれた支援金が、現場で働いている人たちにまでしっかりと行き届いていないのだ。
アルバイトやパートで働く女性の7割、恩恵を受けず
それがうかがえるようなデータもある。昨年10月、野村総合研究所が、コロナで休業を経験した労働者がどれほど休業手当を受け取っていたのかを調べた。正社員は62.8%、契約・派遣社員は49.6%と半数から6割はどうにか休業手当が受け取れているのに対して、パートやアルバイトで働く女性ではわずか30.9%にとどまっている。 コロナ危機になってから多くの事業者が政府や自治体からのさまざまな補償や支援を受け取っているにもかかわらず、その恩恵をアルバイトやパートの女性の7割は、まったく授かっていない状況なのだ。 労働基準法では、企業に対して正規、非正規を問わず休業手当の支払いを義務付けている。新型コロナによる休業に関しても、事業者側が「ウチは経営が厳しいんで無理ですわ」と開き直らないよう、国が休業手当の一部を補償する雇用調整助成金や、中小企業で働く人向けの休業支援金・給付金という制度をつくっている。 ここまでお膳立てをしているにもかかわらず、なぜ「休業手当の不払い」が横行しているのか。 アルバイトやパートという弱い立場の人たちを搾取するモラルのない経営者が世の中にあふれかえっているからだ。このような制度があることを知らない不勉強な事業者が多いのではないか。いや、支援金が足りないのだ、ケチケチしないでもっと大盤振る舞いすればいい。さまざまなご意見があるだろうが、根本的なところで言えば、「小規模事業者が多いから」だと筆者は考えている。 日本企業の99.7%は中小企業というのは有名な話だが、厳密に言えば「中堅企業」は13.2%しかない。86.5%は「小規模事業者」である。「小規模事業者」は製造業などの場合は従業員20人以下、商業・サービス業は従業員5人以下。こういう小さな規模の会社の社長さんが、日本の経営者の87%を占めているのだ。