唖然としたコンバート通告「立浪を使うから」 遊撃ベストナイン獲得も…言えなかった葛藤
立浪入団に伴い…星野監督から指令「セカンドをやってくれるか」
星野監督に二塁転向を告げられたのは、そんなキャンプが終わってからだという。「監督室に呼ばれて『立浪、どうだ』って聞かれた。でも俺、メジャーの練習にいたから立浪がどうしていたのか、あまり知らなかったんだよね。とりあえず『まぁ、うまいですねぇ』なんて話をしたら、星野さんに『俺は立浪を打っても打たなくてもショートで使うから』と言われて“えっ”て思ったよ。だって俺、前年度、ショートでベストナインだよ」。 闘将は畳みかけてきた。「『お前をゲームに出さないわけじゃない。セカンドをやってくれるか』って。そうやって言われればさぁ、“嫌です”とか何か言える感じじゃなかったんだよねぇ。ああ、そうなんだぁ、なんて思ったりしてね」。それで宇野氏のセカンドコンバートが決まった。だが、実際のところは複雑な思いがしばらくあったそうだ。 「星野さんはピッチャーだからと思うけど、ショートとセカンドは違うってわかってほしかったね。逆の動きをするわけだから、ゴロならこっち向いたり、ゲッツーはこう行ったり……。ポジションもね、どこ守っていいか、意外とわからないんだよ。最初は慣れなかった。簡単に考えてほしくなかったというのはあったね」。開幕から「5番・二塁」で出場したが、4月は打率.211、1本塁打とバットの調子は上がらなかった。 だが「それは、あまりポジションのせいにはしたくないんだよね」ときっぱり。やると決めた以上、コンバートを了承したからには責任は自分にあるとの考えだろう。4月下旬の広島遠征中にはギックリ腰にもなったという。「なったんだけど、試合には出たんだよ、俺。出て守った。途中で交代してマッサージを受けたことはあったけど、休まなかった。ゲームに出ながら治したよ」。慣れぬ二塁でも精一杯のプレーを続けた。 1988年の星野中日は4月終了時点で最下位だったが、そこから巻き返して、最後はぶっちぎりで優勝した。ショートのレギュラーとして使われた立浪は新人王を受賞した。宇野氏も懸命のプレーで打率.277、18本塁打、76打点の成績を残した。「結局、あの年に優勝したんだからね、俺を二塁にしたのも監督の戦術ってなるよね」。何とか二塁を守り切ってチームに貢献した。そういう点でも、これまでとはひと味違う思い出深いシーズンになったようだ。
山口真司 / Shinji Yamaguchi