本郷和人 亀の幸せを願ったからこそ奥平へ嫁がせた?強右衛門の子孫との間に生まれた意外な関係とは?亀姫・強右衛門のその後『どうする家康』
松本潤さん演じる徳川家康がいかに戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのかを古沢良太さんの脚本で巧みに描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第21回では、武田方に包囲された長篠城城主の奥平信昌(白洲迅さん)はピンチを伝えるため、鳥居強右衛門(岡崎体育さん)を岡崎へ送り出す。手紙を受け取った家康が織田に援護を求めると、ついに信長(岡田准一さん)が2万を超える軍勢でやって来て――といった話が展開しました。 武田方から長篠城へ虚偽の情報を流すように強要される強右衛門 一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第40回は「亀姫と強右衛門のその後」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし! * * * * * * * ◆亀姫の決死の行動に涙を誘われ 前話では、家康と築山殿の娘・亀姫(當真あみさん)が主役の一人だったのは間違いありません。 本人が奧平信昌のところに嫁に行くのを知らなかったことなどが、信長と家康の衝突を招きましたが、亀姫は信長の前で「奥平殿のもとへ喜んで参ります! 亀はもうわがままを申しませぬゆえ、どうか仲直りをしてください」と必死に頭を下げました。 ここまで天然キャラのように描かれてきた亀姫の命がけの行動に涙を誘われた視聴者も多かったのでは。 一方、ドラマ内では、奧平への嫁入りについて兄・信康から「身分が違う」などと反対意見が出ていたのも印象的でした。 父として兄として、娘や妹に幸せになってほしい。 そう考えるのは、戦国の厳しい世を生きていた大名たちも、私たちと同じ。いや、身内までもが命を賭けて争う戦国の世では、その思いは激烈だったのではないでしょうか。
◆なぜ家康は亀姫を奥平へ嫁に出したのか では当時の大名が、娘たちに幸せになってもらいたいと考えた場合、どういった嫁ぎ先を選んだのか? 概ね、嫁ぎ先は「絶対に裏切りそうにない」一族とか家臣がよい、と考えたのではないでしょうか。もしかすると、こいつとは戦うことになるかもしれない、なんて家には送り出したくない。 家康も同じだったんじゃないかな。 大切な娘である亀さんを奧平に嫁に出す。それは、奧平なら、この先も徳川に安定的に仕えてくれると踏んだからだと思うのです。 そして奧平信昌という人は実際に、徳川家に手堅く奉仕し、10万石の大名になった。側室を持たず、亀さんだけを愛しました。
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