貿易巡る緊張、ユーロ圏の金融安定リスクを高める恐れ-ECB
(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)は、貿易を巡る緊張の高まりがユーロ圏経済にさらなるリスクをもたらし、域内の金融システムにおける脆弱(ぜいじゃく)性を増幅させる恐れがあると警告した。
ECBは20日、半期に一度の金融安定報告を公表。マクロ経済リスクは、インフレ高止まり懸念から予想を下回る成長に対する懸念へと変化していると指摘した。地政学的な不確実さから、ユーロ圏の見通しは一段と不透明になっている。
ECBはまた、世界的に高まる貿易の緊張は「テールイベントの可能性を高めている」として、「マクロ金融および地政学上の不確実性が高まる状況では、資産の過大評価や金融システムに集中するリスクエクスポージャーによって、リスクセンチメントが急激に反転する可能性がある」と分析した。
欧州の政策当局者は、ドナルド・トランプ氏の米大統領復帰が経済に悪影響を及ぼす恐れがあると繰り返し述べてきた。このことは、広く想定されている12月の追加利下げ後の緩和ペースや規模を決定する上で判断材料になるとみられる。
「貿易を巡る緊張が世界的に高まっているほか、保護主義的な傾向が今後世界で強まる恐れもあり、世界経済成長やインフレ、資産価格に悪影響が及ぶ可能性があるとの懸念が強まっている」と、ECBは同報告で述べた。
ECBはまた、欧州の景気回復ペースは数カ月前に予想されていたよりも鈍くなる公算が大きいとも指摘した。
原題:ECB Says Trade Tensions Add to Risks Facing Financial System
(抜粋)
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Mark Schroers