《ブラジル》「でも、ブラジルは良い国です!!!」=サンパウロ難民移民座談会=大浦智子=<第7回> 助け合わない新移民コミュニティ
――かつて、日本移民やアラブ移民、その他世界各国からの移民は、同じ出身国の人々同士で助け合い、コミュニティーを作り、生き残ってきました。今日の難民もまた、同じ出身国の人々でコミュニティーを作り、一緒に生き残ることができないのでしょうか? 【アブドゥル】時代ごとに生き残るための方法があります。現在はかつての移民が到着した時代の状況とは異なります。 昔のシリア人移民の話を聞くと、ブラジル社会に良い影響をもたらしたと言われます。シリア人は、南米、中米、アフリカ、ブラジルの社会の構築にも貢献しました。当時の人々は現在よりも団結していました。残念ながら、現在の私たちの世代は団結しておらず、古いコミュニティーはこの10年間にやって来たシリア人を助けることはありません。 近年、ブラジル全土に難民としてやって来たシリア人は4千人ほどです。将来的には、真のコミュニティーを形成できるかもしれませんが、今は個々人の間で生存競争が繰り広げられています。溺れている人は、溺れている他の人と手をつなぐことはありません。私たちはトラウマや悲しみとともにブラジルに到着し、ここでも多くの困難に直面しています。
国籍によっては、セネガル協会の様にコミュニティーを形成していますが、しっかりと組織されているわけではありません。おそらく、時間が経って人生が良くなれば、お互いを理解できるようになり、関係性も異なってくるのでしょう。ですが現時点では、コミュニティーで結束して生き延びていく事を望むのは困難です。 【カルロス】ベネズエラにいた時、中国、スペイン、イタリアのコミュニティーがいくつもあり、彼らはいつも親密でした。彼らは何か一つの物事を進める時、いつも一緒になって行動します。興味深いのは、中国人がお互いを助け合っていたことでした。スペイン語を知らなければ、中国人はお互いを助けます。ポルトガル人とスペイン人も同様でした。 しかし、ブラジルではベネズエラ移民は彼らの様な習慣がないことに気づきました。ベネズエラ人にとって、他のベネズエラ人は競争相手である敵と見なしていて、コミュニティーで団結するのは非常に難しいです。またベネズエラ人は同胞からの助けを受けたくないし、関わりたくありません。それはブラジルだけで起こっていることだと思っていましたが、コロンビア、ペルー、ボリビアでも同じことが起こっていると知りました。 ベネズエラ人の国外への移住は新しく、この3、4年のことです。これまでは移民を受け入れる側でした。ヨーロッパやアジアから多くの人々を受け入れて来ました。そのため、現在の状況にどう対処すべきか分かりません。人々はもっと助け合うべきです。同じ出身国の人だけである必要はないと思います。前世代は私たちを助けてくれないので、私たちは出身国にとらわれず、若い世代の移民同士で手を取り合うべきです。