メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
マルチメディア ★★★★★★★★☆☆
CLE300eには廉価グレードがなく、AMGライン・プレミアム以上の設定。メインのインフォテインメントディスプレイは11.9インチの縦型が標準装備で、スマートフォンのワイヤレス接続や360度パーキングカメラが備わる。 プレミアムプラスには、カラーのヘッドアップディスプレイやブルメスター製サラウンドサウンド・プレミアムオーディオも装備。ナビのAR方向指示も加わる。メルセデスのARナビは方向指示の表示が、普通の方向案内があるような場所に重なりやや見づらいので、テスターはあまり評価していない。 とはいえ、MBUXマルチメディアシステム自体はおすすめできる以上のもの。ステアリングホイールの左スポークには、実体のカーソルコントローラーがあり、画面にタッチして操作しなくていい。また、ゼロレイヤー構成なので、素早く操作できる。さらに、Apple CarPlayや制限速度リマインダーの停止など、使えるショートカットが画面の周辺部に常時表示されている。 テスト車には、ブルメスターの3Dサラウンドサウンド・プレミアムオーディオが装備されていた。ヘッドレストにスピーカーが組み込まれており、ドルビーアトモスの空間音響が強調される。高性能なシステムで、このクルマにはかなり合っているが、テスター陣を感心させるほどではなかった。 標準装備のレザーシートは20%が合成皮革で、ブラック/ブラウン/ベージュ/レッドを設定。ナッパレザーはオプション。3Dオーディオ仕様は、ヘッドレストにスピーカーを内蔵する。
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
CLE300eのサスペンションは、CLEの中でも独自の仕様だ。ほかでは標準装備されるアジリティコントロール・スポーツサスペンションは採用せず、車高が15mm高い。また、リアのスプリングはスティールのコイルではなく、セルフレベライザー付きのエアスプリング。AMGライン・プレミアムプラスのホイールは、ほかのモデルでは20インチだが、300eは19インチとなる。 そうしたこともあって、CLEのラインナップではもっとも乗り心地が快適な仕様ではないだろうかと思われる。ソフトでふわふわしたものではなく、しなやかさと外的刺激の遮断との妥協点がみごとで、横方向のボディコントロールは頼もしく、ステアリングの精密さも立派なものだ。 やや速いペースと軽い手応えによって操舵はイージーだが、ボディの挙動を十分に把握でき、それでいてサスペンションのトラベルとバンプの吸収は穏やかでショックを取り除いた乗り心地を実現する。 グッドイヤーのコンパウンドはかなり硬めな感じで、ステアリングフィールの手触りにはなにももたらさない。メルセデスのクーペに期待するような、容易に扱えるステアリングにはなっていない。サーキットテストでの過酷な走りに対する耐久性も低く、ドライハンドリングコースを走り切る前にフロントタイヤの熱ダレが顕著に出た。転がり抵抗の低さと静粛性の高さを理由に選んだであろうタイヤなので、仕方ないところだが。 少なくとも、多少は後輪駆動らしいハンドリングバランスを楽しめる。ステアリングの一貫性は損なわれず、シャシーは穏やかにコーナー出口を目指していく。 ただし、上り下りのあるカントリーロードでペースを上げると、ホイールコントロールや、大きくないながらもボディの上下動と揺れが、これは2.1tもあるクルマなのだということを思い出させる。