メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
はじめに
自動車史の過去10年間が明らかにしたことがあるとすれば、おそらく最新のクルマには完全にタイムレスと言えるものがないということだ。それがたとえ、かつては商業的な成功を収めていたものであっても。ただし、メルセデスのクーペは、クラシックなデザインがタイムレスなものに見えた。 【写真】写真で見るメルセデス・ベンツCLEとライバル (8枚) 輝かしい2ドア・メルセデスの系譜には1950年代のガルウイングを持ったスポーツカーも含まれる。その直後にはポントンやフィンテールが続き、角張った堂々たるSECは1980年代の象徴的なモデルだ。いまも愛されるW124世代は、1990年代にクーペをラインナップ。2000年代にその座を受け継いだのは、コンプレッサーユニットを積むCLKだった。 このCLKの人気こそ、メルセデスが最新2ドアで復活を狙うものだ。ここしばらく、AMG専用モデルやコンバーティブル専用車を除いても3車種を併売してきたクーペモデルを、ここにきてCLE単一車種への統合を図ったのはそのためである。 Sクラスクーペは2020年、C217をもって終了。CクラスとEクラスのクーペに代わるのがCLE、というのが正確なところ。C以上E未満といったサイズ感だ。 コードネームは、クーペがC236、カブリオレがA236。2023年10月に生産を開始し、24年春になって英国に右ハンドル仕様が上陸した。当初は4気筒と6気筒、AMG仕様の6気筒ターボをラインナップ。その後、同じパワートレインの4座カブリオレも選べるようになった。 そして、そこに加わる最後のピースが、今回のCLE300eだ。クーペのみに設定されるPHEVである。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
CLEは、CクラスとEクラスの2ドア両方のオーナーへ訴求できるよう、慎重に立ち位置が決められた。ルックスはEクラスよりむしろCクラス寄りだが、プロポーションはかなり異なる。ホイールベースは、Cクーペより25mm長く、Eクーペより10mm短い。全長は、Eクーペより5mm短いのみだ。 ベースとなるのはメルセデスのモジュラープラットフォームであるMRA2なので、EとCのどちらに近いとも言い難い。しかしながら、製造ラインはCとの関連性の強さを示している。生産はCクラスやEQEを受け持つブレーメン工場で、EクラスやSクラス、EQSを担当するジンデルフィンゲン工場ではないのだ。 ビジュアル的には、内向きにすぼまるヘッドライトと末広がりのグリルはCクラスに似たもの。しかし、弧を描くルーフラインと、やや絞り込まれたリアオーバーハングは、もっと平凡な身なりのCクラスより魅力的で、全幅いっぱいに広がるテールライトは、EQブランドのモデルに近い。多少派手めだが過激ではない、CやEのセダンに通じるテイストだ。 すでに投入されている4気筒と6気筒に続くのは、メルセデスが第4世代と位置付けるハイブリッドだ。メインとなるのはM254型2.0L直4で、204psと32.6kg-mを発生する。トランスミッションは9Gトロニック・プラスこと9速ATで、129psと44.9kg-mの電気モーターを内包。駆動用バッテリーは25.4kWhのニッケル/マンガン/コバルト式リチウムイオンで、荷室床下に搭載される。 そのため、ICEモデルにあるフロア下収納スペースは失われ、前後重量配分はリア寄りの実測47:53に。サスペンションは前後マルチリンクだが、リアにはセルフレベリング機構付きのエアスプリングが組み込まれ、増加した重量の制御改善を図っている。 テスト車の実測重量は、燃料タンク半量で2122kg。バッテリーの重さが効いているが、スポーツカーではなく高級路線のクーペなので、さほど問題にはならないだろう。