好調「金曜ロードショー」の裏で……人知れず「崖の上のポニョ」の不運
高橋側に断られた
「放送の約2週間前、4月23日に、北海道の知床半島で観光船の沈没事故が起こりました。『ポニョ』には津波シーンや船が沈む描写があるため、ネット上でも“不謹慎”という声が上がり、局にも“知床の水難事故を想起させる”“海が荒れて船が沈むなど子供が怖がるので、いま放送すべき映画ではない”といったクレームが寄せられました。知床の事故の影響もあって、チャンネルを変えた視聴者も多かった結果でしょう」 日テレは観光船沈没事故を受け、5月1日に放送予定だったドラマ「金田一少年の事件簿」の第2話「聖恋島殺人事件 前編」を放送延期にしていた。では、なぜ「ポニョ」を延期しなかったのか? 「すでにネットニュースでも報じられていますが、5月6日はジブリ作品の『耳をすませば』(95年・近藤喜文監督)を放送する予定でした。この前週の『魔女の宅急便』(89年)と併せて、2週連続でジブリ作品を放送することは、事前に発表もしていました。ところが、4月6日に『ポニョ』に変更することを発表したんです」 ネットでは「耳をすませば」で声優を務めた高橋一生(41)が、同時間帯のドラマ「インビジブル」(TBS)に出演しているので、裏被りだったためだと報じられている。 「結果としてはその通りなのですが、日テレは高橋の事務所に許可を求めたそうです。作品は20年以上前のもので、声優を務めたときはまだ声変わりもしていない頃ですからね。『インビジブル』で主演している現在の高橋と声だけの出演のアニメ映画とは、視聴者層も異なるので問題はないと考えたようです。しかし、事務所はOKを出さなかった。そこで急遽、作品を差し替えなければならなくなったのです」 なぜ「ポニョ」だったのか。
ジブリ放送の“裏ルール”
「日テレはスタジオジブリに対して、2週連続での放送を約束していたので、ジブリ以外の作品にすることはできなかったんです。そのため、ジブリの過去の作品で何が放送できるのかを検討に入ったのです」 「ナウシカ」でも「トトロ」でも良かったのではないか。 「実は、日テレにはジブリ作品を放送する際の“裏ルール”があるのです。それは、各作品ごとに少なくとも2年の再放送期間を空けるというものです」 なぜそんな裏ルールができたのだろう。 「ジブリ作品が視聴者から飽きられないためです。かつては毎年放送した作品もありましたが、そのせいもありジブリ作品といえども視聴率は20%に届くことは少なくなりました。そこで近年では、基本的に2年空けるようにしているんです」 それでも、定期的に放送し続けているジブリ作品に、2年以上空いている作品は少なかった。 「人気の宮崎監督の作品となると、『ポニョ』と『天空の城ラピュタ』しかありませんでした。そこで、もうひとつの“裏ルール”が持ち上がりました。宮崎作品はエンドロールも含め、基本的にノーカットでなければいけないのです」 「ポニョ」の上映時間は1時間41分、「ラピュタ」は2時間4分だ。 「CMを含めれば、どちらも『金曜ロードショー』の枠では収まりません。放送はゴールデンウィーク中の5月6日ですから、子供向けの『ポニョ』を選んだようです。ジブリ担当者は編成部を巻き込み、“ノーカット15分拡大”という特別編成のタイムテーブルに変更してもらったのです。前代未聞とも言える緊急差し替えの後に、知床の事故が起きた。さすがに、再度の差し替えはできなかったということです」 デイリー新潮編集部
新潮社