関東大震災の朝鮮人虐殺…“ファクト”否定したい人たちを助長する都知事
植民地主義が虐殺の背景に
二度と起こしてはいけない、という意味で「今後の防災活動においても念頭に」と書かれています。どうしてこんなことになったのでしょうか――。 大震災が起きた1923年は、韓国を日本が併合してから13年後。日本人が朝鮮に持つ差別の意識、それに抑圧された朝鮮の人々が「いつか日本国内でも立ち上がるのではないか」という恐れなどが指摘されていて、植民地主義が背景にあったことは、否定できません。 震災100年の追悼式典では、静かに鐘が鳴らされ、「しめやか」と言う表現がふさわしかったのですが、実は近年はそうではありませんでした。
追悼メッセージを止めた小池百合子都知事
2017年に、東京都の小池都知事は、朝鮮人犠牲者の追悼式典に追悼文を送るのを止めました。小池知事は「震災による極度の混乱下での事情で犠牲となった方を含め、犠牲となった全ての方に対し、慰霊する気持ちを改めて表すということで対応している」との見解です。 しかし、朝鮮人犠牲者は、災害で亡くなったわけではない。「災害を生き延びた人たち」が、人為的に殺されたのです。あの石原慎太郎さんでさえ送っていたメッセージを取り止めた小池都知事の姿勢には、強い批判が出ています。
朝鮮人追悼式典を騒音で妨害する日本人
2019年に、私は現場で取材しています。私が作ったドキュメンタリー『イントレランスの時代』から、一部をお聴きください。 虐殺の目撃者がまだ生きていた、大震災50年目の年に始まった追悼式典でしたが、数年前から追悼式典のすぐ隣で、「朝鮮人の虐殺はなかった」と主張する集会が開かれるようになりました。 「朝鮮人が、震災に乗じて、略奪・暴行・強姦などを頻発させた、軍隊の武器庫を襲撃したりして、日本人が虐殺されたのが真相です。犯人は、不逞朝鮮人、朝鮮人コリアンだったのです」 「また、テロもありました。朝鮮左翼により計画されてたんです。そして実行されたんです。それに対する、住民の自警行為もありました。しかしね、6000人の大虐殺はなかった!」(RKB毎日放送2000年制作『イントレランスの時代』より) この音は、本来の「朝鮮人犠牲者追悼式典」の会場で録りました。数十メートル離れたところで、式典に反対する人が集会を同じ時間に開いて、スピーカーを碑の方に向けていたのです。「虐殺はなかった」という罵声が聞こえ、日本人として居ても立ってもいられないような気持ちになり、非常に恥ずかしい状況でした。しめやかな雰囲気どころではありません。 朝鮮人虐殺否定派の市民団体「そよ風」は、「犠牲者6000人という数字には根拠がない」として、碑の撤去を求めています。 この時、「不逞鮮人」という差別用語を使っていましたが、この発言は東京都の人権尊重条例で「ヘイトスピーチ」と認定されました。こういう状況が、近年の式典でした。今年は静かに行われたのですが、実はこの後に大きな出来事が起きたのです。