外国人が理解できない「義理チョコ」という同調圧力…バレンタインが「女性から男性へ贈るチョコ」に特化しているのは日本と韓国ぐらい。消えない、性別による社会的役割
日本社会に潜む見えない「性別による社会的役割の幻」について、その構造を読み解く。
その構造を読み解き、正体を浮かび上がらせようとする『この国の同調圧力』(SB新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
外国の人たちには理解不能な「義理チョコ制度」
日本人に多く見られる「みんながしているから、自分もそうする」という行動様式については、意外な形で外国人からの指摘を受けることもあります。 2018年2月1日付日本経済新聞朝刊に、ベルギーの高級チョコレートブランド「ゴディバ」の広告が掲載されましたが、そのメインコピーは次のようなものでした。 「日本は、義理チョコをやめよう。」 そして広告の本文には、こんな文章が記されていました。 バレンタインデーは嫌いだ、という女性がいます。 その日が休日だと、内心ホッとするという女性がいます。 なぜなら、義理チョコを誰にあげるかを考えたり、準備をしたりするのがあまりにもタイヘンだから、というのです。 気を使う。お金も使う。でも自分からはやめづらい。〔略〕 もちろん本命はあっていいけど、義理チョコはなくてもいい。 いや、この時代、ないほうがいい。そう思うに至ったのです。 そもそもバレンタインは、純粋に気持ちを伝える日。 社内の人間関係を調整する日ではない。だから男性のみなさんから、 とりわけそれぞれの会社のトップから、彼女たちにまずひと言、 言ってあげてください。「義理チョコ、ムリしないで」と。〔略〕
不合理さを解決するために、アクションを起こすべきなのは男性
文の終わりには、ゴディバジャパンのジェローム・シュシャン社長の名前が記されていましたが、実際にこの広告を企画・制作したのは、クリエイティブディレクターの原野守弘(株式会社「もり」社長)でした。2018年3月14日、ネット媒体「ハフポスト」はこのゴディバの広告に関する原野のインタビューを掲載しました。 そこで原野は、制作意図について、こう説明しました。 バレンタインの意義の問い直しは、日本の会社の中にある様々な抑圧への問題提起でもありました。「みんながあげているから、私もあげないと……」という同調圧力もそう。 だからこの広告は、チョコレートを贈る女性ではなく、チョコレートを贈られる男性に呼びかける形にしたんです。 残念ながら今の日本企業だと、男性の方が権力や実行力を持っていることが多いじゃないですか。 同調圧力みたいな会社にはびこる色んな不合理さを解決するために、アクションを起こすべきなのは男性ではないか。そう思っていました。