中国に束縛されるVW クルマ産業の未来勢力図から日本は消えない
“妄想”に基づいたソリューション
つまり「EVが時代の要請」だという理解が間違っている。欧州各国の環境相は大抵が左派出身であり、実現性よりも理想主義を掲げる傾向が強い。例えばパリ協定の基準値にしても、世界人口がたった8億人だった産業革命期の二酸化炭素排出総量をベースに現在の排出総量を決めている。1人あたりの比率ではなく総量なのだ。もはや正気を疑うレベルである。 現在の世界人口は75億人。つまり当時の約10倍である。日本に当てはめれば、文明を江戸時代に巻き戻して、それをさらに1人あたり1/10に削減せよという話だ。クルマの電動化がどうかとか言うレベルではなく、化石燃料の完全凍結に加えて、電気も含む全てのエネルギーに大幅な利用制限でもかけない限り達成できない。人の移動は徒歩に戻るしかないし、インターネットもスマホもダメだ。 そういう妄想に近い環境意識をベースに、再生可能エネルギーで全て解決できるというご都合主義のソリューションで環境問題は語られている。 それをつまみ食いして都合良く利用しようとする欧州自動車メーカーのプロパガンダと、それに手もなく乗せられた国内大手マスコミがEVパラダイムシフトと日本の敗北ストーリーを叫んでいるだけで、冷静な顧客はEVを求めて販売店に殺到していたりは全くしていない。 相変わらずたっぷり公的な補助金をつけて、メーカーからも自宅用充電設備の支援制度など販促費を可能な限り積み上げて「もってけドロボー!」の勢いなのだが、それでも楽々生産が需要に追い付いている。 マーケットが着いてきていないものに慌てて対応しても仕方ない。世間の風潮に流されて至急開発して、販促費を大量投入して叩き売りをしなければならない理由は全くない。 もちろん長期的にみれば確実に進行する電動化やEV化に備えて、足下を固める必要はある。それには技術を蓄積し、必要な部品供給のルートをしっかり確立していく方が重要だ。そう考えると、いま電動化で世界一進んでいるのは日本の自動車メーカーだろう。