中国刑法修正で未成年犯罪低年齢化に対応へ
【東方新報】中国刑法の修正案の第二稿が13日、全人代常務委員会に提出された。その修正案で責任能力がないとして刑事責任を問わない年齢を14歳未満から、12歳未満に引き下げられることが判明した。中国法曹界はおおむね賛成している。修正案では、故意の殺人、故意の傷害、傷害致死など「悪質な犯罪」について、最高人民法院の批准をえて、刑事責任を追及するとした。また未成年者犯罪予防もあわせて考慮し、より完璧で専門的な矯正教育とリンクさせていくという。 14歳未満の未成年者犯罪のニュースは、近年多くのメディアが報じてきた。だが現行法では満14歳以上でないと刑事責任は問えないことになっており、現行法が現在の社会の複雑化に対応しておらず、一部少年犯罪を助長する口実になっている、との批判がおきていた。実際、未成年は人を殺しても、罪に問われない、などと、うそぶく不良少年たちもおり、こうした心理が未成年者を犯罪に走らせているといった指摘がでていた。 北京日報(Beijing Daily)によれば、14歳以下の未成年が全犯罪に占める割合は2009年の12.3%から2017年には20.11%に上昇し、犯罪の低年齢化は顕著だ。 比較的最近におきた未成年者の凶悪犯罪としては2019年の遼寧省(Liaoning)大連市(Dalian)で起きた13歳の少年が10歳の少女を殺害し、遺体を灌木林に遺棄した事件。少年はこのとき刑事責任が問えず、3年間、施設に収容されることになった。この時、未成年犯罪者に対しても刑事責任を追及すべきではないかという議論が社会全体でおきた。また今年10月4日、江西省(Jiangxi)萍郷市(Pingxiang)第七中学校で、一人の女子学生が複数の男女学生にリンチにあった事件では、警察は5人の学生に対しては5日間の拘留処分だけで、お咎めなしだったことで、この議論は再燃していた。 今年の全人代、全国政治協商会議でも、刑事責任年齢に関する問題がテーマにあがった。全人代代表で広東省(Guangdong)弁護士教会の蕭勝(Xiao Sheng)会長は「13歳は小学校教育が完全におわった年齢で、相応の認識能力、コントロール能力があると思われる。行為の性質や意義を十分に理解できる」と主張。また5月21日に中国のニュースサイト澎湃新聞が行った微博(ウェイボー、Weibo)上でのアンケート投票では、1万2000人の投票者のうち83%が未成年の刑事責任適用年齢は14歳以下であるべきだと答え、12%が年齢制限を設定する必要がない、と答えていた。 目下の修正案では、刑事責任適用年齢を引き下げると同時に、さらに未成年の心身の健康と発展を創造できる良好な法治環境を整えるという方向で調整が進んでいる。専門の矯正教育制度整備や、また16歳未満で刑事罰を受けない場合、家長や保護者の監督教育、矯正教責任についても盛り込まれている。 国際社会の状況をみると、194か国・地域中、刑事責任能力があるとされる最低年齢を14歳とする国・地域が全体の64%を占める。英米の法体系では、悪意が年齢を補足する制度となっており、犯罪を行った年齢が刑事責任年齢に達していない場合も、そこに悪意があるとの証拠があり、主観的に明らかに犯罪行為と認識していた場合、刑事責任年齢に達しているとみなされうるという。 中国の未成年者犯罪の増加、凶悪化の背景には、留守児童と呼ばれる出稼ぎの両親と離れて農村部の実家などに放置される子供たちが十分に教育や愛情をうけていないことや、虐待、搾取にさらされやすい環境、長年続いた一人っ子政策の弊害としての、一人っ子に対する過剰な期待や甘やかしによる人格形成の問題など、社会や家庭、教育システムの問題もあるとみられ、刑法修正だけでは問題の根本解決にならない、という見方もある。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。