軽仮設業界、高稼働率も鋼材高騰が直撃。コスト増転嫁急ぐ機材メーカー・リース業は機材購入抑制も
軽仮設機材の製造販売、リース・レンタル業では、製品の母材となる鋼材や副資材、原油などの価格高騰の影響が直撃している。2021年度の軽仮設機材稼働率は高水準を維持したものの、機材メーカーは製造コストの大幅負担増を強いられており、製品価格への転嫁が必至の状況。機材のリース業では、製品価格に加えてガソリン代高騰で物流・運搬費がかさんでいる。レンタル料が上がらない中で機材の新規購入、更新を控える動きが出てくる可能性もある。母材や副資材高騰の影響が長引くと「安全機材の安定供給」体制を揺るがす事態にもなりかねない。 軽仮設機材リース主要50社の21年度稼働率は、東京五輪閉幕後の8月から今年の3月まで60%超の高水準を維持。地域によって若干温度差はあるものの、大都市圏での大型再開発案件、五輪後に再開した民間物件向けなどの需要がけん引したものとみられる。 稼働率に呼応して、売上高も月次ベースで昨年5月以降、前年同月実績を上回っており、昨年9月と今年3月は200億円の大台を突破した。ただ、本統計の売上高にはレンタル料のほか、不足弁償金(滅失料)や修理費、運搬費なども含んでいる。 リース料に関しては「五輪後からは物件によって若干値段のたたき合いも見られる」との指摘もあり、売上高の増加はレンタル料以外の費用増加要因が大きいようだ。 今期、大都市圏などでは引き続き物流倉庫など大型物件が堅調に推移する見通し。また、半導体工場の新設などが控える九州など一部地方でも期待される案件がある。 一方、機材の母材となる鋼材が今期に入ってから再度大幅な値上げ基調になっていることから、軽仮設機材メーカーは材料の安定調達と自社内で吸収しきれないコスト上昇分の製品価格への転嫁が待ったなしの状況。すでに一部、母材や製品の在庫が薄くなっているメーカーも出ている。 軽仮設機材のリース業者は、毎年定期的に経年機材の更新を行っている。ただ、コロナ禍からの回復途上にある自社の資金繰りなどの要因で、新規の買い増しを控える動きが前期から続いており、機材価格が高騰するとさらに買い控えの動きに拍車がかかる可能性もある。 リース業のレンタル料が上がらない理由については「リース業ではすでに減価償却が終わっている機材も扱っているため、新規機材更新コスト上昇分のレンタル料への反映を需要家に認めてもらうのが難しい」という事情もある。一方で、ガソリン代高騰などを背景にした運搬費増加分の反映は比較的説明がしやすいと指摘する声も。安全機材の安定供給体制を維持するためにも、レンタル料金の適正化は喫緊の課題だ。 先の見えない鋼材や副資材の値上げ負担は、建設現場の安全と安心を担う軽仮設業に重くのしかかっている。