CES完全オンライン開催で爪痕は残せたか。来年につながるJ-Startupの挑戦
コロナ禍で初の完全オンライン開催となった2021年、デジタル出展のなかから注目のスタートアップを探し当てるのは、かなりの高難度だった。スタートアップにとっても、例年とはかなり勝手が異なる状況だったはずだ。 【全画像をみる】CES完全オンライン開催で爪痕は残せたか。来年につながるJ-Startupの挑戦 JETROが支援する「J-Startup」の担当者から聞く出展までの経緯は、例年にない苦心がにじむ。
過去最高の応募数から一転、「オンライン開催支援」に苦闘
CESの目玉エリアの1つ、スタートアップ村とも言われる「エウレカパーク(Eureka Park)」。 ここ数年、フランスの「La French Tech」を筆頭に、国ごとにまとまって出展し、「パビリオン化」する動きが活発になっていた。JETROでも2019年から「J-Startup」としてパビリオンを出展。徐々に規模を拡大し、存在感を増していたところだった。 J-Startupはもともと経済産業省の肝いりでスタートした、より抜きのスタートアップを支援するプロジェクト。CES出展に向けて間口を広げ、参加企業を全国から募ってきた。2020年は29社が出展。本来のCES2021ではさらにエリア面積を拡大するとともに、エウレカパークの上階にあたる展示エリア・Sands Expoにも初めての出展を予定していたという。 2020年6月初旬に募集を開始し、7月初旬にはキックオフイベントも開催。そんななかで、「CESの完全オンライン開催」が発表されたのは、過去最高となる70社近い応募を締め切った直後の、7月末のことだった。 JETROの瀧幸乃さんはこう振り返る。 「ひょっとしたらリアルでの開催は難しいかもしれないと、ある程度想定はしていましたが、主催のCTA(Consumer Technology Association)もギリギリまで開催を模索していたのでしょう。 オンラインになるという発表後もどんな形になるのか、詳細がなかなか決まらずに予定が後ろ倒しになり、結局参加企業の審査が全て終わって、53社の出展が確定したのは12月のことでした」(JETRO瀧さん) 当初、オンライン開催がどんなスタイルになるのか、詳細は全くわからなかった。しかし、躊躇(ちゅうちょ)している時間はない。 瀧さんらはCESの運営団体CTAの仕様決定を待たずに、独自のJ-Startup出展の公式サイト(ランディングページ)の設置を決め、動き始めた。 WEBデザインや紹介動画の制作 出展企業各自の動画制作やメディア対策も支援 海外メディアの取材誘致を狙うために、プレスリリースの書き方の指導や製品サンプル送付のサポート オンラインで複数回の相談会 といった「CESの状況に左右されない海外プロモーション支援」に頭を切り替えた。 中でも特に困難を極めたのが「オンライン版CESへの出展支援」だった。CTAが用意したシステムをどう使い、どのように動画や資料を掲載するか。53社を個別にサポートするのは大変な作業だったという。 もちろん、ランディングページへ人を呼び込むための施策も必要だ。2020年はパビリオンの一角に、日本テレビのアンドロイドアナウンサー「アオイエリカ」をアイコンとして配置し、多くの来場者の足を止めた。 オンラインでも同様に目玉となる取り組みとして、独自のカンファレンスを開催。「超高齢化社会を超スマート社会へ」をテーマに、「ウェアラブル」「ロボティクス」など、海外メディアの関心が高く、日本の独自性を打ち出せるテーマを取り上げた。 では、成果はどうだったのか。