みなみかわ、友人に打ち明けられた「あの光景忘れられへんねん」。“体力ゲージを0にする”ラストシーンが問うこと<映画『どうすればよかったか?』>
逃避と、後悔と葛藤
『どうすればよかったか?』を観た。ホームビデオで撮られてるような家族の記録。 幸せそうな家族の映像の中で、タイトルの示す問題提起がじわりじわりと投げかけられ、観ているこちらの首を絞めていくような作品。 監督の非常に個人的な「家族」の話。「家族」だから逃げ場のない中で、弟という立ち位置から、最大の距離を取りながらも解決策を模索する。第3者から見れば簡単に見つけれるような解決策も、家族の思惑が交錯するため全く見えない。残酷に時間だけが過ぎ去っていく。 人生で1本撮れるか撮れないかの作品だろう。藤野監督でしか撮れない。当事者じゃなければ伝わらない説得力。撮っていいのか?という葛藤さえも伝わってくる。わかりやすい悪などいない。むしろそこにはある種の優しさがある。 「その優しさこそが幸せを奪うこともある」という、至極簡単な話をここまで直視させられる映像があっただろうか? そして監督の逃避と、後悔と葛藤が、観客の体力ゲージを0にするラストシーンへとつながっていく。監督が自身へ投げかける問いでもあるし、叫びでもあったように感じた。 私が芸人になって数年後、久しぶりにS君からメールがきた。「がんばってるな~俺もがんばるわ~」と。 私はたぶんあのとき、S君から逃げたんだと思う。情けない。「どうすればよかったか?」という問いからすらも、簡単に逃げたんだと思う。 逃げられない環境で、逃げられない問題と向き合ったこの作品を、ぜひ観てほしい。
みなみかわ