「同性愛者は二流市民扱いだ」。国に対して同性婚求める裁判、原告が訴えた。
同性愛者をいないものにしないで。愛する人とともに生きる生き方を認めて欲しい――。 同性同士での婚姻実現を求めて、複数の同性カップルが国を訴えている「結婚の自由をすべての人に」訴訟。 東京地裁(田中寛明裁判長)での5回目となる期日が12月2日に開かれ、原告らが「結婚は子どもを生み育てるためもの」という国の主張に反論した。 また、「当事者尋問」の実施を求めて、原告側の代理人弁護士が強く要望する場面もあった。
結婚は子どもを生み育てるためのものじゃない
原告らは同性同士の婚姻を認めないことは、憲法が保障する「婚姻の自由」を侵害し、「法の下の平等」や「個人の尊厳の保障」に違反していると訴えている。 これに対して国は2019年10月に「結婚は伝統的に子どもを生み育てるためのものなので、同性同士は想定されていない」と主張した。 今回の期日では弁護士がこの主張に反論し、「子どもを産まない異性カップルも完全に無視したものだ」と強く批判。 「婚姻が伝統的に生殖と結びついていたのであれば、なぜこの国の婚姻制度は、子を産むことを婚姻の要件としていないのか」 「婚姻に関する民法の規定のどこを見ても、『子を産まない者は婚姻できない』『子を産まない者の婚姻は無効である』『子を産んでいない場合は離婚できる』などとは書かれていない」と、現状との矛盾を指摘した。 さらに弁護団は、「結婚には愛する人と人生の楽しみや喜び、悲しみをわかち合い、その人らしい幸せを感じて人生を楽しむためのもの」という価値があると述べ、国の主張はその価値を貶めるものだと批判した。
同性婚ができる社会だったら…
国が同性婚を認めないことが、同性愛者に対するスティグマを助長してきた、とこの裁判で原告らは主張した。 原告のひとり小川葉子さんは、何でも話せた母親にも同性愛者であることを隠さなければならず苦しかった、と意見陳述で語った。 小川さんはパートナーとの同居をめぐって母親と衝突したり、パートナーが親戚から中傷されたこともあるという。 その時の苦悩を振り返り、「あの時同性婚制度があれば、周囲を納得させられたかもしれない」「この社会で異性愛者と同じ選択肢がない同性愛者は、二流市民扱いをされているように感じます」と訴えた。 小川さんのパートナーである大江さんも、自身が同性愛者であることで、父親が親戚から激しくバッシングされたという。 「異性カップルであれば祝福されたであろうことが、家族も巻き込んでなぜこんなにもつらい思いをしなければならないのかと憂鬱な気持ちになりました」と、被告の方に何度も視線を向けながら、悔しさや苦しみを語った。 国が同性婚を認めていないことは子どもたちにも影響を与える、と話したのはパートナーと子育てをしている西川麻実さんだ。 「同性カップルに育てられている子どもを『かわいそう』と言う人もいますが、それがかわいそうであるのなら、それは同性愛を一段低いものに貶めるこの社会の偏見であり,その偏見の大きな原因の一つが,同性同士の結婚を認めていない法律そのものから来るものだと思います」と、西川さんは語った。