科学的に正しい<音楽の聴き方>「気分を上げたい、リラックスしたい」目的別・おすすめの曲を専門家が提案
楽曲の選択次第で“なりたい気分”になれる
興味深いのは、単純に短調=悲しい曲ということではなく、テンポやリズム、音圧などの組み合わせによって喜怒哀楽の表現が決まってくるという点だ。 「ただし、テンポが遅く、静かに演奏されることの多い優しい曲や悲しい曲は、判別がつきづらいようです。起伏が少ない曲は、人により受け止め方が異なるのかもしれません」 こうした研究事例などをもとに、河瀬さんは“なりたい気分”に合った楽曲の選定方法をこう話す。 「選定基準の1つはテンポ。一般的に、速くも遅くもないテンポは120BPMとされており、それ以上がアップテンポで覚醒的、それ以下がスローテンポで沈静的とされています」 ちなみに、120BPMの代表曲は「ロッキーのテーマ」で、ウオーキングに最適のテンポとされる。 「ヒーリング音楽としてよく言及されるエンヤの曲には、科学的な裏付けが。実験参加者に『人前で話す』というような心理的ストレスをかけた後にエンヤの曲を聴かせたところ、ストレスホルモンであるコルチゾールの値が減少したという実験結果が出ました」 今回紹介しているエンヤの「Only Time」は83BPM。安静時の人の正常な心拍数は1分間で60~100回とされているので、呼吸をするような安心感があるのかもしれない。 「歌詞の内容で感情を揺さぶられるという楽曲もたくさんありますよね。歌詞はセルフトーク(心の中のひとりごと)として機能しますから、気分を上げたいときは、ポジティブな歌詞の曲を選ぶと効果的です」
河瀬さんが選ぶ目的別おすすめミュージック
状況や感情に合わせてどういう音楽が最適か、河瀬さんの解説とおすすめの音楽を紹介。気分に合わせて聴いてみよう。
<1>リラックスしたい
「落ち着いていてゆっくりとしたテンポ、そしてリズムが複雑でないものがいいと思います」(河瀬さん・以下同) エンヤ「Only Time」(83BPM) アイルランド出身の歌手、エンヤによるヒーリング音楽の代表格。 エリック・サティ「ジムノペディ」(75~95BPM) 数々の映画やCMなどのBGMとして使われているピアノ曲。“ヒーリング音楽の原点”ともいわれる。 サン=サーンス「白鳥」(60BPM前後) チェロとピアノによって演奏される優雅で穏やかな楽曲。