現役選手、1人になる可能性…!消えゆく近鉄バファローズ戦士たち
「飛ぶ雲、飛ぶ声、飛ぶボール」近鉄バファローズの球団歌を覚えておられる人は、どれくらいいるだろうか?近鉄バファローズ(1999年からは大阪近鉄バファローズ)がオリックス・ブルーウェーブとの合併で姿を消して16年、巨人の岩隈久志が引退、さらに11月2日にはヤクルトの近藤一樹が戦力外通告。来季、現役選手はヤクルトの坂口智隆1人になってしまう可能性が出てきた。 【画像】菅野智之「4連覇壮行会」で美女にニヤリ…ほか野球スター連続秘蔵写真 近鉄は2004年、球界再編問題に絡んでオリックスと合併。2007年には近鉄の資本が引き上げられ完全に消滅した。2004年、最後の年に一軍でプレーした近鉄の選手が何年に引退したか、年ごとに追いかけてみよう。 〇2004年 松田匡司(30歳/外野手)引退 加藤伸一(39歳/投手)引退 関口伊織(33歳/投手)引退 赤堀元之(34歳/投手)引退 球界再編の年限りで他球団に移籍せずに引退したのは4人。加藤伸一は南海、広島でも活躍。通算92勝。赤堀元之は近鉄一筋、3年連続最多セーブに輝いた救援投手。 〇2005年 星野おさむ(35歳/内野手)楽天 近澤昌志(23歳/捕手)楽天 小池秀郎(36歳/投手)楽天 川尻哲郎(36歳/投手)楽天 高村祐(36歳/投手)楽天 岡本晃(32歳/投手)オリックス 栗田雄介(25歳/投手)オリックス 〇2006年 益田大介(33歳/外野手)楽天 永池恭男(33歳/内野手)楽天 矢野英司(30歳/投手)楽天 〇2007年 水口栄二(38歳/内野手)オリックス L.バーンズ(33歳/指名打者)米マイナー 長坂健治(30歳/捕手)楽天 吉田豊彦(41歳/投手)楽天 藤崎紘範(27歳/投手)楽天 近鉄の選手の多くは分配ドラフトで、オリックスか新球団楽天に移籍した。しかし近鉄で最多勝も記録した小池秀郎、阪神で3度二けた勝利の川尻哲郎、南海で3度二けた勝利の吉田豊彦、近鉄でオールスターにも出た内野手の水口栄二などベテランは3年以内に引退した。 〇2008年 鷹野史寿(35歳/外野手)楽天 的山哲也(38歳/捕手)オリックス―ソフトバンク 山下勝己(31歳/内野手)楽天 森谷昭人(29歳/外野手)楽天 吉岡雄二(37歳/指名打者)楽天 吉川勝成(31歳/投手)オリックス K.バーン(34歳/投手)オリックスーロッテー米マイナー 〇2009年 礒部公一(35歳/外野手)楽天 前田忠節(32歳/内野手)楽天ー阪神 愛敬尚史(33歳/投手)楽天 宮本大輔(28歳/投手)オリックス 新里賢(28歳/捕手)楽天ーロッテ 〇2010年 大村直之(34歳/外野手)ソフトバンクーオリックス 川口憲史(34歳/指名打者)楽天 福盛和男(34歳/投手)楽天ーレンジャースー楽天 J.パウエル(34歳/投手)オリックスー巨人ーソフトバンクー米マイナー 〇2011年 大西宏明(31歳/外野手)オリックスー横浜ーソフトバンク 下山真二(36歳/外野手)オリックス 近鉄最後の選手会長として球団存続に奔走した礒部公一は2009年限りで引退。 安打製造機として鳴らした大村直之は、ソフトバンク、オリックスと渡り歩いて2000本安打まで135本で戦力外に。 福盛和男は楽天に移籍後メジャーに挑戦。当時の野村克也監督に「やめときゃいいのに」と言われながらレンジャースに移籍したが活躍できず、2シーズン目の途中に楽天に復帰して引退。 2002年の最多勝投手のジェレミー・パウエルはオリックス、巨人でも二けた勝利。2008年にはオリックスとソフトバンクの間で「二重契約問題」が起きている。 大西宏明は2004年に抜擢され、レギュラーの座まであと一歩だったが球界再編の余波でレギュラーになれなかった。最後の年は育成枠でソフトバンクのファームでプレー。この年育成で入団した新人捕手の甲斐拓也の強肩に驚いたと語っている。 〇2012年 北川博敏(40歳/内野手)オリックス 阿部真宏(34歳/内野手)オリックスー西武 H.カラスコ(43歳/投手)ナショナルズーエンゼルスー米マイナー 有銘兼久(34歳/投手)楽天 山村宏樹(36歳/投手)楽天 朝井秀樹(28歳/投手)楽天ー巨人 究極の殊勲打と言われる「代打満塁サヨナラつり銭なし優勝決定ホームラン」を2001年に打った北川博敏の引退は、一つの時代の終わりを象徴した。オリックスでは主軸打者として8年間プレー。思い出多き京セラドーム大阪でファンに別れを告げた。 〇2013年 高須洋介(37歳/内野手)楽天 山本省吾(35歳/投手)オリックスー横浜・DeNAーソフトバンク 〇2014年 中村紀洋(41歳/内野手)ドジャースー中日ー楽天ー横浜・DeNA マリオV.(40歳/指名打者)米マイナー 高木康成(32歳/投手)オリックスー巨人 高須洋介は楽天に移籍してから正二塁手になり、オールスターにも出場した。 中村紀洋はイチロー世代のスラッガー。球団が消滅したオフにポスティングによるメジャー挑戦を表明、ドジャースに移籍するも成績を残せず2005年オフにNPB復帰。2013年には近鉄出身選手として最後の2000本安打を記録した。 〇2015年 藤井彰人(39歳/捕手)楽天ー阪神 阿部健太(31歳/投手)オリックスー阪神ーヤクルト 山崎浩司(35歳/内野手)広島ーオリックスー西武ー楽天 〇2016年 香月良太(34歳/投手)オリックスー巨人 藤井彰人は楽天の正捕手になったが阪神にFA移籍。メジャーから復帰した城島健司が故障した穴を埋めて渋い活躍をした。 阿部健太は2014年に引退し打撃投手となったが、ヤクルトのファームの選手層が薄かったために2015年、育成枠で現役復帰、投手登録だったが野手として二軍の試合に出場し、話題となった。 〇2020年 岩隈久志(39歳/投手)楽天ーマリナーズー米マイナー 2016年に巨人の香月良太が戦力外になってからは、岩隈久志、坂口智隆、近藤一樹の3選手が「元近鉄」の最後の砦を守ってきた。 しかし岩隈は2020年限りでの引退を表明した。岩隈は近鉄最後のエースであるとともに、楽天最初の20勝投手、さらにはマリナーズ時代の2013年にはサイ・ヤング投手の記者投票で3位に入るなど、フェリックス・ヘルナンデスとともにWエースとして活躍した。巨人では一軍登板はなかったが、日米3球団でエースを張った見事な野球人生だったといえよう。 2020年戦力外通告 近藤一樹(37歳/投手)オリックスーヤクルト 近藤一樹は2004年は11試合に投げて1勝だった。オリックス、ヤクルトと渡り歩き、2018年にはキャリアハイの74試合に登板してリーグ最多の35ホールドを記録。最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。2020年11月2日に戦力外通告を受けたが、まだ他球団でプレーする可能性はある。 〇現役 坂口智隆(36歳/外野手)オリックスーヤクルト 坂口智隆は近鉄時代はわずか8試合に出場しただけの控え外野手だったが、オリックスではリードオフマンとして活躍。2016年に自由契約になったがヤクルトで見事復活。2018年に青木宣親が復帰して外野のポジションが埋まると未経験だった一塁手に挑戦、この年、キャリア3度目の3割をマーク。2020年も規定打席に達した。「どっこい生きてる」と評したくなるようなしたたかな野球人生を歩んできた。 来季も少なくとも1人のバファローズ戦士が、プレーするはずだ。猛牛の系譜はどこまで続くのか、見届けたい。 文:広尾 晃(ひろおこう) 1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。
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