引退表明した元日本代表DF中澤佑二の無名時代から這い上がったストイックな挑戦人生
日本サッカー史上に残る鉄人がスパイクを脱いだ。J1のフィールドプレーヤーでは歴代最長となる、178試合連続先発フル出場記録をもつ元日本代表DF中澤佑二(40)が8日、現役引退を表明した。2018シーズンまで17年間所属した横浜F・マリノスから同日に発表された。 ヴェルディ川崎で練習生からプロ契約を勝ち取った中澤は、現役生活のひとつの区切りとして、プロ20年目となる2018シーズンに臨んでいた。しかし、左ひざに抱えていた慢性的な痛みの影響もあって、昨年8月19日の鹿島アントラーズ戦でベンチ入りメンバーから外れた。 突然の欠場で足かけ6年にわたって継続してきた連続先発フル出場記録だけでなく、途中交代を含めた連続試合出場記録も199試合でストップ。左腕にキャプテンマークを巻き、後半37分から途中出場した12月1日のセレッソ大阪との最終節が、約3ヵ月半ぶりの復帰戦にして現役最後のプレーとなった。 マリノスを通じて発表された中澤のコメントには、熟慮を重ねた末に、初志を貫く決断に至ったことが綴られている。 「もがき苦しみ、がむしゃらに掴み取ったプロ生活。来年もF・マリノスで現役を続ける選択肢もありましたが、最後は“中澤佑二”らしく、自分の決断を信じ、1ミリの後悔もなくピッチを去ろうと思います」(原文のまま) J1歴代3位となる593試合に出場した中澤は、日本代表としても歴代6位の通算110キャップを獲得。DF登録選手では歴代最多となる17ゴールをあげたが、決してエリートではない。 埼玉県立三郷工業技術高時代はまったくの無名。プロになることを夢見て、浪人の時期も経験している。 マリノスで長くフィジカルコーチを務めた池田誠剛氏(現サンフレッチェ広島フィジカルコーチ)は、中澤の「すごさ」をこう表現したことがある。 「何もないところから這い上がってきた男なので、他人と同じことをしていたら上へ行けないとわかっている。だから、根気が半端じゃない。辛いことをコツコツと常に続ける。そうさせる気持ちが一番すごい」 最後まで「トライ」を繰り返してきたサッカー人生で、自らの意思で海外移籍のチャンスを遠ざけたことがある。2005年夏。マリノスとの契約を3年7ヵ月も延長すると同時に、ブンデスリーガを含めて数チームから届いていた、非公式なものも含めたオファーすべてに断りを入れた。