常識にとらわれない! 逆張りの欧米スタートアップ3社
”前払い”で注目を集めるPurple Dot
(2)Purple Dot ・提供サービス:ECサイトへの前払い機能のプラグイン ・地域:英国ロンドン市 ・設立:2019年 ・投資家:AI Seed Fund、Connect Venturesなど 現在のEC業界、決済業界を語るうえで、いわゆるBNPL事業者(=Buy Now, Pay Later クレジットカードなどの既存インフラに依拠しない後払い)の存在を欠くことはできません。海外ではAfter Pay(豪)、Klarna(スウェーデン)、Affirm(米)などが時価総額1兆円を超える勢いで成長しています。 さて、後払い事業者の台頭を尻目に昨年ロンドンで創業したのが、消費者に事前デポジットをさせることでECサイトに確実な販売機会を提供する「Pay Now, Buy Later(前払い)」とでも呼ぶべきコンセプトを提唱するPurple Dotです。この前払いの仕組みは以下の通りです。 (1)消費者はPurple Dotを導入するECサイトにおいて購入したい商品を選択し、定価よりもディスカウントされた金額(およそ25%減)を前払いする (2)そのディスカウント金額での販売を受け入れるかどうかはECサイト事業者が都度決定できる (3)ECサイト事業者が販売を受け入れた場合は、前払い済みのディスカウント金額で売買完了する (4)逆に販売を受け入れない場合は、消費者は前払いした金額の返金を受けることができる Purple Dotは上記のような前払い機能をプラグイン形式でEC事業者に提供し、売買が成立したときに売買金額の5%を手数料としてECサイトから徴収します。現時点ではファッション系ECに注力しており、ECサイト視点では季節要因や売れ行き状況などを考慮してディスカウント販売を行うことで、在庫ロスの最小化を図ることができるプロダクトです。 先に紹介したAltoとは対照的に、Purple Dotは固定費やリスクを極力排除する、アセットライトなビジネスモデルという印象です。Purple Dotを導入するECサイトが全ての商品販売責任を負い、ユーザーとなる消費者に前払いを課すことで信用リスクからも解放されます。 まだ事業立ち上げから1年強という若い企業ですので、ディスカウント設定を含む業務プロセスは手運用の部分が多く残されている可能性は高いですが、取引量の累積が進めば商材ごとの(ECサイトと消費者の両方にとっての)最適価格についての学習が進み、データカンパニーとしても存在感を持ちうるポテンシャルを秘めています。