子どもの近視抑制対策は思うほど難しくない。 「この子のため」と考えすぎると長く続かない
「小中学生の50.3%が近視になっている」という衝撃的な調査を文部科学省が発表したのは今年7月のことだ。データによると、わずかこの2年の間に約1割の子どもが新たに近視となった。このことを憂いているのが眼科医の窪田良氏だ。 『近視は病気です』(東洋経済新報社)の著者・窪田良氏と、非認知能力育児のパイオニアであるボーク重子氏が「子どもの近視」と子どもの心身の土台作りをテーマに対談する第2回は、子どもの近視抑制に効果が出た「1日2時間の屋外時間」をどう確保するかについて語り合う。
■近視抑制先進国と日本での教育現場の違い ボーク:前回窪田先生が、台湾の小学校では国策として2010年から「子どもの屋外活動を1日2時間確保しなければならない」という制度を導入して効果が明確に出たと話されました。世界各国の教育に関心がある者として、実際に台湾の小学校でどのように実施したのか気になります。 窪田:休み時間は教室の電気を消して外遊びを促したり、美術などの一部の授業を屋外で実施したりすることで、小学生が屋外で1日2時間過ごせる時間を確保しています。子どもの自主性に任せるというよりは、カリキュラムとして仕組み化して成功した印象を受けました。
日本でもひと昔前までは、休み時間は外で遊ぶように先生から促されましたよね。今は校舎内で休み時間を過ごすことも許容され始めたので、小学校にいる間の屋外時間は減っている可能性が高いですね。 ボーク:今の親世代、シニア世代ともに「子どもの頃、平日にどれくらい外で遊んでいましたか?」という質問をすると、2~3時間という回答が一番多かったそうです。ところが、今の子どもで一番多い回答は0~30分とのことです。習い事もいくつも掛け持ちすることもめずらしくありません。今の子どもたちは放課後も屋外で自由に過ごすことが減ってきています。
窪田:学習指導要領が改訂された2020年以降、教育の現場はどう変わったのでしょうか。 ボーク:2020年の教育改革は素晴らしいものでした。ですが、これまで認知教育に重点が置かれていた教育現場で「認知+非認知」にシフトするには時間がかかるでしょう。 なぜなら従来の生徒に「教える」から「生徒の思考力と主体性を『導く』向き合い方」をしていく必要があるからです。 ■近視抑制先進国ほど強制力のない日本でできること