1ヤードゲインの先には = NFLチアリーダーの2020シーズン=
新型コロナウィルス感染症の全世界的な感染拡大が始まってから、ほぼ1年が経つ。米プロフットボールNFLのシンシナティ・ベンガルズのチアリーダーとして活動する山口紗貴子さんから、この1年がどのような年だったか振り返った手記をいただいた。 【写真】マスク無しでフィールドに立つ山口紗貴子さん。2020年シーズンはこの当たり前のことが叶わなかった
日本へ帰らないという選択
NFLの2020年シーズンが終わりました。 2020年が始まった時は、こんな1年になるなんて、だれが予想できたでしょうか。 NFLも然りです。4月あたりから開幕も怪しくなり、どうなるのだろうという日々が続きました。 NFLチアリーダーに至っては、オーディションが途中で中止になったり、活動に制限があったりと、日々不安な毎日でした。一寸先は闇、アメリカで言うと1ヤード先は闇、のような感じですね。 私が所属するベンガルズチアリーダーに関しては、バーチャルでのオーディションを開催していましたが、最終的にファイナルオーディションの段階でオーディションが中止になり、継続を希望する16名のベテラン(=経験者)メンバーだけが残りました。最後までルーキーを入れたいと、チーム側と交渉していたディレクターは苦渋の決断だったと思います。 オーディションがあるのかないのか、シーズンがあるのか無いのか分からない中でも、常に準備をしておかなければなりません。私自身は、ジムが開いていない時期は家でYouTubeを見ながら毎日トレーニングをし、バーチャルで行うダンスクラスをとって家でひたすら練習に励みました。 自宅待機の中、一人暮らしのアパートでは喋る相手もおらず、これからの暮らしの保証が何もなく、日本に帰ることも何度も考えましたが、最終的にはアメリカで粘るという選択をしました。
ようやく始まったチアの活動
レギュラーシーズンが開幕してからも、無観客の試合や、集まって練習などが出来なかったため、特に活動はできないまま1カ月半くらいが過ぎました。 ようやく観客を入れて試合ができると発表され、10月からチアリーダーもスタジアムで踊ることが許されました。練習は基本的にZoomを使って行いました。本番の前に1回だけ集まって対面で練習しましたが、ほとんどぶっつけ本番のような形でした。 普段はダンスや体型へのコーチの厳しいチェックがありますが、それも無く、なんだか気の抜けたような感覚でした。その中でも日々のトレーニングや自主練習は欠かさないように心がけました。その心掛けは人それぞれだったのかなと思います。 チアリーダーも、規則で10人以上集まれなかったので、2チームに分かれて1試合ごとに交代でパフォーマンスをしました。パフォーマンスはVIPが使用する『パーティーデッキ』というエリアから。 VIPエリアというだけあって、普段は見えない試合が良く見えました。