韓国文大統領が米韓合同軍事演習で「北朝鮮と協議」は正気か、元駐韓大使が解説
● 米韓合同軍事演習に 危機感を覚える金正恩氏 金正恩朝鮮労働党総書記が米韓合同軍事演習の中止を求めたのに対し、文在寅大統領は1月18日の記者会見で、「必要なら北朝鮮と合同軍事演習について協議できる」とする発言を行った。合同軍事演習の一方の当事者である米国と調整した上での発言ではなく、まず、韓国が行動を起こして既成事実を作り、これに米国を引きずり込もうとするいつものパターンの行動である。 【この記事の画像を見る】 こうした発言が出てきたのは、合同軍事演習の実施を協議することが米韓の安全に甚大な影響を与えることを理解できない文在寅氏の大統領としての無能力を示すものなのか、それともその重大性を理解した上での国家反逆罪的な行動なのか。いずれにせよ、文大統領の発言は米韓間で対北朝鮮政策の包括的な協議が始まれば、一層大きな波紋を投げかけるだろう。 金正恩氏は朝鮮労働党大会で、米韓合同軍事演習を「南北間の軍事合意に逆行するもの」と非難し、南北関係改善の前提条件として「米韓合同軍事訓練の中断」を要求した。
金正恩氏は、それまでもトランプ大統領に送った書簡で、米韓合同軍事演習について「誰を防ぎ、攻撃しようという意図なのか」「戦争準備の演習の主要対象は我が軍隊であり、これは我々の誤解ではない」などとして懸念を示してきた。 米韓が合同軍事演習を行えば、米軍の空母や原子力潜水艦、戦略爆撃機が集結し、金正恩氏ら指導部を狙った特殊作戦部隊も参加するなど、北朝鮮を攻撃できる体制が整う。演習が行われている期間は金正恩氏も気が気でないのであろう。しかし、北朝鮮は核ミサイルで常に韓国や日米を脅かしている。そうした行動を起こさなければ、合同軍事演習におびえる必要はないはずである。 ● 合同軍事演習の再開は 米韓同盟の試金石 韓国政府は南北関係の観点から、演習の縮小・延期も可能という立場だが、米国は演習を行うかどうかを「同盟の試験台」とみている。 米国議会のシンクタンクに当たる議会調査局(CRS)は2月2日の報告書で、米韓同盟の最大の懸案に「合同軍事演習を再開できるかどうか」を挙げた。 報告書は、文大統領が「合同軍事演習を巡り米国の政策に反する北朝鮮との交渉を提案した」と批判し、「文大統領は北朝鮮により多くの譲歩を行う立場を支持し、トランプ前政権と周期的な緊張関係が醸成された。こうした動きはバイデン政権になっても続きそうだ」と演習を巡る韓国の姿勢に懸念を強めている。 さらに報告書は、北朝鮮情報分析家の言葉を引用し「近いうちに金正恩氏が3年間凍結した核実験と長距離弾道ミサイル実験を再開する可能性が提起される。北朝鮮は持続的に短距離・中距離ミサイルをテストし、全世界でサイバー攻撃をしている」と述べ、北朝鮮に対し軍事的な即応体制を準備しておくことの重要性を指摘している。