【プロレス】内藤哲也が飯伏幸太に語り掛けた言葉
新日本プロレス1・4&5東京ドーム大会の軸となったのは、IWGPヘビー級&IWGPインターコンチネンタルの“2冠王座”を巡る闘いだった。最終的には飯伏幸太が初日に王者の内藤哲也を下し、2日目はジェイ・ホワイトの挑戦を退けて、見事にドーム2連戦の主役となった。DDTでデビューしてから約17年、紆余曲折を経てついに飯伏がIWGPヘビー級王座に到達したドラマ性の一方、東京ドーム2日間でもっとも印象に残った場面を創出したのは内藤だった。 写真=絶対不屈彼女、安納サオリの8枚の写真 1・4ドームのメインで敗れた試合後、内藤はみずから飯伏にベルトを手渡した。自然な形で新王者に寄り添い、さらに手を上げて称えると、歓声が制限された広い会場内から観客の大きな拍手が起こった。普段の人を食ったような内藤の言動とは釣り合わない、潔い行動の裏にはどんな思いがあったのか? 内藤哲也にとっての1・4、そして1・5東京ドームに迫った。 (以下は週刊プロレス1月27日号に掲載)
「自分がいない東京ドーム大会を見ているのは悔しかったし、あのときああすれば良かった、こうすれば良かったって、次から次に頭に浮かんできましたね」 1・5東京ドーム。内藤哲也は人目につかないように1塁側ベンチ奥に座り、リング上を見つめていた。 自分のいないリング上。もし前日に…という仮定は無意味とわかっていながらも、悔しさを噛みしめながらベルトを争う2人の姿を視線の先にとらえていた――。 1・4東京ドーム。内藤は飯伏幸太に敗れて2冠王座から陥落した。みずから対戦相手に指名してのタイトルマッチで、シングル対決は約1年半ぶり。前哨戦から感じていた飯伏の変化は、1対1で肌を合わせるなかで確信となった。
飯伏は“引き算”ができるレスラーになっていたという。 「いままでの飯伏はタッグだとケニーであったり、棚橋であったり、割と引っ張ってもらっている印象があったんですよね。でも、今回の前哨戦ではSHOとタッグを組んでいて、うまい、ヘタは別として、飯伏から引っ張ろう、引っ張ろうという姿勢が見えていたんです。いままでの飯伏とちょっと違う雰囲気を感じていて、実際に東京ドームで試合をしてみて、やるプロレスがちょっと大人になったというか。 以前は飛び技とかも含めて割と派手なプロレスをしていたのが、そういうのを極力、最小限に抑えていて、必要なものしかやらない。ある時期からレスラーって、いままであったものから削いでいくことが多いんですけど、必要なもの以外を削いでいく飯伏を感じたんです。シングルで対戦するのは1年半ぶりで、久々に闘ってみてそのあたりの変化は感じましたね。だからG1も連覇できたのかなって」 試合後の内藤の行動は意外なものだった。レフェリーからベルトを奪い取るとみずから飯伏に手渡し、勝者の手を上げて称える。ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの一員としてではなく、いちレスラーとして同世代のライバルを素直に称える潔さは、2人の特別な関係性をあらためて浮き彫りとさせた。 今年のドーム2連戦のなかでも、もっとも印象に残ったと言ってもいい象徴的なシーン。内藤はなにを思いあのような行動を取り、そして飯伏にどんな言葉を語り掛けたのか? 「オレが逆の立場で、権利証を失ったのに情けみたいな形で指名をされて、タイトルマッチというのはちょっとイヤなシチュエーションですよね。100%、対戦相手だけを見るのは難しい状況だったと思うけど、でも飯伏はあの日、あのリング上ではオレだけを見ていてくれた気がした。その感謝と、あとはオレに勝ったんだから、明日も防衛しろよっていう気持ちを込めてですね。一番にあったのは敬意、感謝です。掛けた言葉? あのときの素直な気持ちを伝えただけです。いま言ったような感謝と、こんな試合をして明日も大変だろうなっていうエールみたいなものですよ」