ブルートレインと夜行列車、今後はどうなる?
夜行列車の「役割」まだまだ終わっていないのでは
かつては日本全国で見られた、夜汽車の旅。しかしながら現在運行されているのは、東京と北海道を結ぶ「北斗星」「カシオペア」と、大阪と北海道を結ぶ「トワイライトエクスプレス」の3列車のみです。これら3列車は、移動手段というよりも旅そのものを楽しむための列車であり、逆に言うと純粋に移動目的としてのブルートレインは「あけぼの」をもって絶滅してしまったと言えます。 新幹線が日本列島を縦断し、また高速道路網も全国に発達した今、寝台列車を移動に使おうという人はほとんどいないでしょう。しかし夜行高速バスの台頭が示すように、夜間の移動需要はむしろ増えています。バスよりも快適で安心・正確な交通手段として、夜行列車の「役割」は、まだまだ終わっていないのではないでしょうか。 そしてもう一つ、夜行列車での移動には、バスでは味わえない「旅情」があります。ベッドから眺めた外の景色、寝台の向かい側に座った人との会話、そういった体験ができなくなるのは、少し残念に思います。効率だけが重視されがちな今の日本に、夜行列車という「ゆとり」があってもいいような気が、筆者にはするのです。 もちろん、夜行列車やそれを運営するJRにも、相応の努力が必要でしょう。高すぎる料金体系・不便なダイヤ・ニーズに合っていない設備を改善することで、利用客の増加へとつながり、そしてそれが収支の改善につながる・・・利用者と鉄道会社がウイン・ウインの関係になるために、ぜひともJRのアクションに期待したいものです。 (文/伊原薫/鉄道ライター) ■伊原薫(いはら・かおる) 大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。