海外GⅠ未勝利に終わった2024年 日本馬得意のカテゴリーで〝相手が悪すぎた〟香港カップ
現地時間8日、香港のシャティン競馬場で香港国際競走が行われた。毎年12月、恒例となったこのイベント。1200メートルから2400メートルまでの4つのカテゴリーに、今年も日本から9頭が参戦。地元香港勢やヨーロッパ勢、オーストラリアから赤道を越えてやってきた馬たちと、覇を競った。 結果、1600メートルのGⅠ香港マイルでソウルラッシュ(牡6・池江)が2着、メインで2000メートルのGⅠ香港カップはリバティアイランド(牝4・中内田)とタスティエーラ(牡4・堀)がそれぞれ2、3着に好走したものの、残念ながら先頭でゴールを駆け抜けた日本馬はいなかった。 これで2024年に海外でGⅠを制した日本調教馬は皆無に終わったわけだが、こと今回の香港に限れば、決して不思議な結果ではなかったと思う。 まず、国際4競走の開幕を告げるGⅠ香港ヴァーズ(芝2400メートル)ではステレンボッシュ(牝3・国枝)が1番人気に推されて3着に敗れたわけだが、1、2着のジアヴェロットとドバイオナーはともにイギリスの調教馬。これで前身の香港国際ヴァーズ時代を含めて全31回中23回は欧州調教馬が制していることとなり、ある意味、妥当な結果と言えた。
馬場ではなく距離では?
フランスのGⅠ凱旋門賞(芝2400メートル)で日本馬が敗れるたびに「馬場が欧州向きであって日本馬には向かない」といった声が上がるが、こと2400メートルに限れば香港だけでなく、ドバイ(シーマクラシック)やアメリカ(ブリーダーズCターフ)も欧州勢が圧倒的に勝利している。香港にしてもドバイにしてもアメリカの各競馬場にしても、馬場だけで考えれば決して欧州馬向きとは思えないのに、結果を残しているのだ。なぜ、凱旋門賞ばかり馬場に言及されるのか不思議であり、馬場うんぬんより2400メートルという距離が、欧州勢にとって砦なのだと思う。 同様のことを言えるのが、短距離における香港馬の速さだ。GⅠ香港スプリント(芝1200メートル)はカーインライジングとヘリオスエクスプレスという地元香港勢のワンツーフィニッシュとなり、これで全26回中20回が香港馬の優勝となった。逆に、欧州調教馬でこのレースを制した馬は一頭もおらず、今回もスターライトが挑んだが、ブービーの13着に惨敗した。 そういう意味で日本馬のお家芸といえるのは中距離戦線だ。シャドウゲイトやリアルスティール、香港でもルーラーシップにネオリアリズム、エイシンヒカリやウインブライトなどが、日本ではGⅠを勝っていないのに海外でGⅠを勝っている。エイシンヒカリに至っては欧州でもGⅠ(仏イスパーン賞)をぶっちぎりで優勝した。 近年活躍馬を出しているダート路線も同様で、GⅠドバイワールドCを勝ったウシュバテソーロやGⅠサウジC勝ちのパンサラッサも、やはりJRAでのGⅠ勝ちはない。 これらを考慮すると、香港Cでリバティアイランドとタスティエーラが2、3着したのもうなずけるのだが、競馬には時の運もあって、今年は1頭、とてつもなく強い相手がいた。これで3年連続での香港C優勝となったロマンチックウォリアーだ。日本勢にとっては相手が悪かったとしか言いようがない。(平松さとし)
東スポ競馬編集部