野菜と果物ががんを防ぐ? 日本人のがんで最も死亡率の高い「肺がん」の発症リスクを下げるおなじみの野菜とは
果物・アブラナ科の野菜は、肺がんのリスクを下げる
日本人でがんの死亡率が最も高いのは、肺がんです(2022年)。肺がんの最大の危険因子は喫煙です。喫煙率は男女とも減少傾向にありますが、いまだに男性は24・8%と4人に1人は喫煙しています(令和4年)。女性の喫煙率はあまり高くありませんが、非喫煙者でも肺がんになる可能性はあります。 野菜・果物の摂取と肺がんとの関係では、特に果物について、国立がん研究センターのリスク評価で肺がんの予防効果が「可能性あり」という結果になっています。野菜では、特にアブラナ科の野菜が肺がんのリスクを下げる可能性があると報告されています。 アブラナ科の野菜の摂取と肺がんについて調べた国内の研究では、一度も喫煙したことのない男性は、アブラナ科野菜の摂取が多いと肺がんリスクが51%も低くなることがわかりました。過去に喫煙していた人も、肺がんリスクが41%低くなっていました。 残念ながら、喫煙する男性については、アブラナ科野菜の摂取と肺がんのリスクに関連は見られませんでした。また、女性については、喫煙習慣の有無にかかわらず、アブラナ科野菜の摂取と肺がんリスクに関連は見られません。 アブラナ科の野菜には、ブロッコリーやキャベツ、からし菜などがあります。これらの野菜には辛味成分であるイソチオシアネートという物質が多く含まれており、このイソチオシアネートは発がん物質の排出を高める作用が報告されています。 アブラナ科の野菜を多く摂取している人ほど、動脈硬化や血管疾患が少ないという報告もあります。女性も喫煙習慣がある男性も、アブラナ科の野菜を意識して食べることには健康上のメリットが大きいといえるでしょう。 ただし、野菜や果物を食べれば、がんの発症リスクが確実に下がるというわけではありません。野菜・果物の摂取量とがんの関係については、今後のさらなる研究が待たれます。とはいえ、少なくとも現時点の研究結果から、胃がん、食道がん、肺がんの予防に効果が期待できそうだということは間違いありません。
---------- 林芙美(はやし ふみ) 女子栄養大学栄養学部准教授。健全な食生活は、私たちの健康寿命を延ばすだけでなく、生活の満足感や幸福感を高め、さらには社会・環境面にも良い影響をもたらすという信念のもと、栄養面に加え、環境にも配慮した食生活のあり方について研究している。研究代表者として『人と地球の未来をつくる「健康な食事」実践ガイド』を作成し、科学的・実証的な食に関する知識を広め、健康で持続可能な食生活の実現に貢献している。 ----------
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