大ヒット商品も誕生 元 コーチ のリード・クラッコフ氏は老舗ジュエリーブランドをどう改革したのか
最高5万ドルの高額ラインも投入
ホリデーシーズンに向けて、ジョン・ハーディはハイエンドな限定版を中心とするアーティザン(Artisan)シリーズを投入した。もっとも高額なアイテムの価格は5万ドル(約750万円)だ。売り上げは上々で、そこにはこれにつながるチャンスの存在がほのめかされている。最新コレクションのブラック・サンド(Black Sand)で採用された独自のホワイト・ブラックダイヤモンド加工は、ブランドのシグネチャーアイテムのひとつになりつつある。また、ジョン・ハーディはシングルダイヤモンドとソリティアの使い方も新たに模索している。同ブランドはこれまで、ダイヤモンドの使用をパヴェ(アクセント)・ストーンをあしらったジュエリーに限定してきた。 ファンが期待していいジョン・ハーディの新しい部分は、これだけではない。ベストセラーコレクションのニューバージョン、カジュアル路線のコレクション、来年のブランド創業50周年記念に合わせた限定版デザイン、コラボ商品など、ほかにもいろいろある。ジョン・ハーディの次のステップはホームアクセサリーのカテゴリーだと、クラッコフ氏は話す。 「いちばん難しいのは、刷新することだ」と、クラッコフ氏は言う。「ファンはブランドのどこを好きになってくれたのか? それを守りながら、新たな興奮を生み出せるはるか遠くにまでブランドを動かさなければならない。(中略)ビジネスの前進に有意義な方法で、ファンの注意を引かなければならない」。ジョン・ハーディのジュエリーは、いまも職人400人による手づくりであり、これは注目に値する。
ソーシャルメディアも積極的に活用
マーケティングに関しては、クラッコフ氏は少ない投資で多くの成果を上げることに力を入れている。バリ島の現地モデルだけを起用するだけでなく、ブランドイメージにはビーチカルチャーやサーフカルチャー、自由や旅といったテーマなどが幅広く表現されている。また、ジュエリーの広告にありがちな、同じコレクションのおそろいのジュエリーをモデルたちに身につけさせるのではなく、いまの時代に合わせたスタイリングをイメージに取り入れている。 さらには、AR(拡張現実)生成のソーシャル投稿も開始した。クラッコフ氏によれば、そのエンゲージメント率は平均の投稿の10倍に上るという。インフルエンサーやユーザー生成コンテンツ(UGC)も積極的に活用されており、近いところでは、スタイルアイコンのジェナ・ライオンズ氏がロックフェラーセンターにあるジョン・ハーディの店舗でショッピングを楽しんでいる様子がソーシャルメディアに投稿されている。 今後のジョン・ハーディは、クラッコフ氏の専門知識とビジョンにコミュニケーションの焦点を絞っていくことになっていくようだ。また、若年層が重視する倫理的な製造工程にも、これまで同様にマーケティングの力点が置かれていく見込みだ。なお、マイアミデザインディストリクトに店舗をオープンしたジョン・ハーディだが、クラッコフ氏によれば、アート・バーゼル(Art Basel)などの同地区で開催されるアートフェアに参加する予定はないという。小規模ブランドが雑音に飲み込まれずにメッセージをオーディエンスに伝えるのは難しい、と同氏は述べている。 [原文:Luxury Briefing: Inside Reed Krakoff’s rapid reinvention of a 50-year-old brand] Jill Manoff(翻訳:ガリレオ、編集:戸田美子)
編集部