Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

津田大介──不条理を受け入れることから【GQ JAPAN連載特集:希望へ、伝言】

配信

GQ JAPAN

ジャーナリスト兼メディア・アクティビストの津田大介さんは、カミュの『ペスト』を再読、感銘を禁じ得なかったそうです。 【そのほかのメッセージを読む】錦戸亮、美輪明宏、YOSHIKIらが緊急参加!

──あなたの現在の日常について教えて下さい。コロナ問題以前と変わったこと、新しい習慣、仕事や家族との向き合い方、その他この期間に考えたことなど、どんなことでも構いません。

3月下旬から徒歩圏内にある自宅と会社をひたすら往復する毎日です。感染のリスクを抑えるため、遠出する場合は自分一人で車を運転して公共交通機関は利用しないようにしています。個人的には3月に入ったころからこの問題は東日本大震災とリーマンショックを合わせたような社会に大きなインパクトを与える出来事になると思って情報を集めるようになりました。モードとしては東日本大震災直後と同じで、起きている時間はできるだけコロナの情報を集めています。この時代に自分に求められている情報発信は何かということを突きつけられていると思っていて、試行錯誤しながら新しい取り組みを始めようと日々考えています。

──どうしても家庭内で過ごす時間が増えたのではないかと思います。この期間に読んだ本、観た映画、聴いた音楽などがあれば教えて下さい。またそのなかで感銘を受けたものがあれば、ぜひご紹介いただきたく存じます。

カミュの『ペスト』はすばらしいですね。NHKの「100分de名著」の一気再放送も見てしまいました。大規模感染症がもたらすパニックを予測した映画『コンテイジョン』もNetFlixで見ました。山本太郎さんの『感染症と文明』など、大きな視点でこの問題を捉えることの重要性を日々感じます。『経済政策で人は死ぬか?』を読むと、厳しいロックダウンを長く続けることがいかに現実味がないかよく理解できます。

──先の見えない日々ですが、それでも前向きに生きるためのメッセージをいただきたく存じます。GQ読者へ、自分へ、家族へ、日本へ、世界へ......メッセージの対象 はだれでも構いません。

朝日新聞の論壇時評に書きました(https://www.asahi.com/articles/DA3S14416834.html)が、現在世界中の人たちが「感染したくないが、普段当たり前にできていた活動が制限されるのが辛い」という巨大なジレンマに晒されています。安心と自由の間で振り子のように気持ちが揺さぶられると、やがて心に余裕がなくなり、そうなるとウイルスではなく、人に苛立つようになる。これが現在起きていることなのだと思います。治療薬がなく、先行きが見えないことが不安を増大させているわけですが、もともと人生は病気にかかったり、事故に遭ったりする不条理なリスクと隣り合わせです。この病気が今後どのような経過をたどるかは、様々な分野の専門家が予想しています。医療者だけでなく、様々な分野の専門家の予測を知ることでこの感染症の全体像を知ることが不安を鎮め、人に対して苛立たないようになる一番の「クスリ」になると思います。未来が明るいわけではないですが、かといって絶望的に酷いわけでもない。不条理を受け入れ、新しい世界に移行できるようにライフスタイルを見直し、物を考える時間を増やすことがいまは何よりも肝要かと思います。 PROFILE 津田大介 1973年生まれ。2019年夏に表現の自由を巡って大騒動となった「あいちトリエンナーレ2019」で芸術監督を務める。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)ほか。

【関連記事】