流通量「巨峰」抜きシャイン初の王座 手軽さ人気に火 高単価で改植進む
東京など4大市場で10月中旬までに取引された2020年産ブドウの中で、「シャインマスカット」が流通量全体の31%を占め、「巨峰」を抜いて初めてトップに立ったことが分かった。ブドウの生産量は減少傾向だが、黒系ブドウからの改植が進み、品種構成は大きく変化している。(高梨森香)
日本園芸農業協同組合連合会(日園連)によると、2020年産シャインの流通量は、10月中旬までで8901トンだった。一方、巨峰は7363トンで全体の25%。前年はシャインと27%で同率だったが、今年初めてシャインが31%で首位になった。シャインは11月以降も出荷があるためシェアはさらに高くなる可能性がある。 「シャインマスカット」は06年に品種登録されると、種なしで皮ごと食べられる手軽さや食味の良さから人気に火が付き、取引価格が上昇した。4大市場での1キロ当たり価格は11年に1574円だったが、18年以降は2000円前後の高値で推移している。 栽培面では樹勢が良く多収。高単価も期待できるため、生産農家が増えた。農水省の統計によると、11年に26都府県で379ヘクタールだった栽培面積はデータがある直近の17年には41都府県、1378ヘクタールまで拡大した。主産地のJA全農長野の担当者は「農家所得を上げられ、他品種からの改植や他品目からの参入が進んだ」と話す。 他のブドウに比べて棚持ちが良く、流通業者の評価も高い。生産量が増え、売り場が果実専門店だけでなくスーパーにも広がった。現在、シャインの約6割がスーパーで販売される。首都圏に展開するスーパー「いなげや」は、20年9月単月の取扱量が5年前に比べ5倍以上に増加。「単価は輸入ブドウの倍以上でも、売れ行きが良い」という。 シャインブームは当面続く見方が強いが、全農長野の担当者は「シャインだから売れる時代ではなくなってきた」と指摘。「生産の広がりに伴って品質のばらつきが出ていて課題だ。1房500~550グラム、30~40粒、糖度は19以上という出荷基準を設けて指名買いされるよう品質を保っていく」と、産地間競争を見据える。 大手青果卸・東京青果は「スーパーでのパック売りに対応した小房での販売など、需要に応じた供給ができる産地が注目される」と展望する。
<ことば> 4大市場
東京、首都圏、名古屋、関西圏にある果実を扱う大規模市場の通称で、計37市場ある。4大市場は市場流通する果実の3分の1を取引する。
日本農業新聞