アングル:米年末商戦が本格化、今年は短期決戦 物価高が影
Siddharth Cavale Ananya Mariam Rajesh [ニューヨーク 27日 ロイター] - 米国では感謝祭明け29日の「ブラックフライデー」から年末商戦がいよいよ本格化する。小売り大手各社はレイバンのスマートグラス、超大画面テレビといった最新ハイテク機器や高額商品を目立つ場所に展示したり、ナイキのフリースやホカのスニーカーなど人気定番商品の在庫を拡充したりと工夫を凝らしている。 全米小売業協会によると、今年は感謝祭から12月2日の「サイバーマンデー」までに実店舗とオンラインで買い物を計画している人は昨年の1億8200万人を超え、過去最高の1億8340万人に達する見通しだ。 ただ投資家と電話会議を行った小売り4社の幹部は、自社と買い物客の双方とも今年の年末商戦については慎重な姿勢で臨むとの見方を示した。消費者が物価高に直面し続ける中で、業界が想定する年末商戦全体の売上高も2018年以降で最低の伸びにとどまると見られる。 テルシー・アドバイザリー・グループのアナリスト、ジョセフ・フェルドマン氏は、消費者は「散財」せずに購入品を厳選する公算が大きく、実際に買う前の「価格チェック」もより頻繁になるだろうと予想する。 それでも全米で381店を展開する百貨店ノードストロームのピーター・ノードストローム社長は「ファッションの専門家を招いたバーチャルイベントから店内での各種イベントまで、われわれはお休みを祝う体験や催しを提供しようとしている」と、商戦に積極的に取り組む姿勢を示す。 <日数減少> 今年は感謝祭からクリスマスまでが27日と昨年より5日も少ないこともあり、業界幹部の見通しは熱気を欠いている。 スポーツ用品小売りのディックス・スポーティング・グッズのローレン・ホバート最高経営責任者(CEO)は「2つの要素が存在するので慎重に臨みたいと思っていた。1つはマクロ経済環境の不確実性、もう1つは年末商戦期間の短さだ」と語る。 ホバート氏によると、864店を展開するディックスは在庫戦略を戦略的に修正し、人気の高いナイキのフリースの品揃えでサイズや色をより充実させたという。 アパレル大手のアバクロンビー・アンド・フィッチは、Z世代向け店舗「ホリスター」とミレニアル世代重視の「アバクロンビー」でセーターやジーンズ、ニット製ボトム、フリースなどの堅調な需要を想定している。 家電量販店大手ベスト・バイのコリー・バリーCEOは、店頭で期間限定の超目玉商品(ドアバスター)、オンラインではセルフケア製品、旅行、ゲームといったお勧めギフト商品の提案をそれぞれ復活させていると明かした。 店頭の展示商品には、97インチ超の超大画面テレビや拡張現実(AR)機能を備えたレイバンのスマートグラス、健康をサポートする指輪型スマートデバイス「オーラリング」の最新版などを追加しているという。 <物価高> 消費者の物価高に対する警戒感は根強い。S&Pグローバル・レーティングスによると、スポーツ用品や家具、住宅関連用品など非生活必需品を販売する小売業者は、大幅な値引きを迫られ、営業利益が圧迫されかねない。 アネックス・ウエルス・マネジメントのチーフエコノミスト、ブライアン・ジェーコブセン氏は「消費者は商戦期間が終わるぎりぎりまで、値引きがあるかどうか見極めようとする可能性がある」と指摘する。 こうした中で百貨店のコールズは、11─1月期の売上高が従来の予想よりも大きく落ち込むとの厳しい見通しを示した。対照的にノードストロームは通期売上高見通しレンジの下限を引き上げた。 ラッファー・テングラー・インベストメンツのシニアアナリスト、ジェイミー・マイヤーズ氏は「消費者だけでなく(小売り)企業も二層化している。勝ち組に転じる向きと、取り残されたままのグループだ」と話す。