【BMW初のFFホットハッチ】BMW 1シリーズ 128tiへ試乗 血統感じる楽しさ 前編
FFで4気筒のみになった1シリーズ
text:Richard Lane(リチャード・レーン) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) 2年ほど前、BMWは自らのラインナップへ大鉈を振るった。それは、コンパクトな1シリーズ。 【写真】BMW初のFFホットハッチ 128tiとライバルモデルを比較 (151枚) 第2世代までの1シリーズは、唯一のフロントエンジン、リアドライブのハッチバックだった。しかも、正真正銘のBMW製6気筒エンジンを選ぶこともできた。 1シリーズのトップグレードを選べば、金額に見合った特別なクルマを手に入れることができた。しかし現行の1シリーズが、FFになったことはご存知のとおり。 BMWはSUVのX1で採用する前輪駆動用のFAARプラットフォームを、1シリーズにも適用。2013年にマニュアル・トランスミッションを911 GT3には与えない、というポルシェの決断並みの驚きがあった。 どちらも、ビジネスとしては成立しているようだが、熱狂的なファンの支持は充分に得られていないと思う。結果として、ポルシェはGT3に3ペダルのMTを復活させ、最高のドライビングマシンへ仕立て直している。 一方で、6気筒エンジンを搭載した1シリーズは帰って来ない。4気筒エンジンが横向きに搭載されたままだ。 懐かしんでいても仕方ない。もっとも、クリーミーなほど滑らかな3.0L直6ユニットを搭載した先代のM135iやM140iも、完璧ではなかった。 エンジンの重量は軽くなく、シリアスなホットハッチと比較して俊敏性は大きく劣っていた。リア側のサスペンションは減衰力が足りず、乱れた路面では少し不安になるほど安定性に欠いていた。
フォルクスワーゲン・ゴルフGTIに挑戦状
振り返ると、FRで6気筒エンジンの1シリーズも、本物のホットハッチとは呼べなかったと思う。ランニングコストも安くはなく、ハッチバックのグランドツアラー、といった方が適正だった。 逸材揃いのホットハッチと伍する内容とはいえなかった。個性的で、適した道路条件なら素晴らしい走りを楽しめたけれど。 この新しい1シリーズに追加となった128tiは、ホットハッチと対峙するために設計されている。素晴らしいFRのサルーンを生み出してきたBMWがFFにスイッチし、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIに挑戦状を叩きつけている。想定外だ。 BMWは戦いで勝利を収めるべく、小さくない努力を投じている。その意気込みを示すように、1990年代以来となる「ti」というグレード名を復活させた。ツーリスモ・インテルナツィオナーレの略だ。 フロントバンパーなどの赤いアクセントは、気に入らないという人もいるかもしれない。でも、それはあくまでも表面的な部分。詳しく見ていこう。 専用デザインのバンパーの奥には、トップグレードで四輪駆動のM135i xドライブと同じ、4気筒ツインスクロール・ターボ・ユニットが収まる。最高出力はM135iの306psから264psへ、最大トルクは45.8kg-mから40.7kg-mへと、デチューンされているが。 フロントには、M135iと同じトルセン式のリミテッドスリップ・デフを装備。ロックレシオは若干落とされている。