スイス中銀、再びゼロ金利に向かう-フラン投機と闘う手段が縮小
(ブルームバーグ): スイス国立銀行(中央銀行)が2年にわたって続けてきたプラス金利政策が、終わりに近づこうとしている。中銀は今週、利下げをする見通しだ。
政策金利は0.25ポイント引き下げられ0.75%となる見込み。0.25ポイント刻みの利下げを続けた場合、ゼロまであと3回となる。スイス中銀は3カ月に1回のペースで政策決定を行うため、利下げペースを緩やかにしない限り、2025年中にゼロ金利に達する可能性が高い。
経済成長を促しスイス・フランへの投機を抑制するために、中銀が12日に0.5ポイントの利下げをすると予想するエコノミストも少数派ではあるがいる。
いずれにしても、すでに世界最低水準にある金利は今回の利下げでさらに低くなり、中銀がフランへの投機と闘う貴重な手段が縮小することになる。
フラン上昇圧力が収まらない場合、当局は厳しい選択を迫られる可能性がある。トランプ次期米政権の怒りを買うリスクを冒して為替介入するか、あるいは金融システムへの副作用を伴うマイナス金利に逆戻りするかだ。
ピクテのエコノミスト、ナディア・ガルビ氏(ジュネーブ在勤)は「欧州では成長が低迷している上に、貿易戦争が起こる恐れもある。マイナス金利の可能性も排除できない」と述べた。
今週、スイス中銀総裁として初めて決定会合に臨むマルティン・シュレーゲル氏は、最近の世界的インフレショックによる中断を経て、フラン投機の新時代に直面している。
市場はフランを、地政学的な緊張が高まった際の安全資産と見なし、フラン上昇圧力はこの1年で強まった。フランスとドイツの政局がフラン高をあおり、スイス経済の回復力がさらに後押しした。
ユーロに対しては先月、ほぼ10年ぶりの高値を記録した。
原題:(抜粋)
--取材協力:市倉はるみ、Joel Rinneby.
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Bastian Benrath-Wright